[原子力産業新聞] 2003年2月27日 第2175号 <1面>

[国連安保理] 新決議案、米・英、仏も対抗案を提示

国連安全保障理事会は24日、イラク問題に関する非公開協議を開き、米国等が「イラクは武装解除をする最後の機会を失った」として新たな決議案を上程する一方、仏等は現地査察の拡大と延長を訴える「覚書」を提出、27日に再度協議することとなった。

新決議案は米、英、スペインが共同提案したもので、イラクが決議1441号による「最後の機会を生かさなかった」としている。安保理が11月に可決した決議1441号は、イラクが大量破壊兵器放棄の義務に反して、継続的に重大な違反を行っていると認定、この義務に従う最後の機会を与えるとしていた。

一方、仏、ドイツ、ロシアの提出した「覚書」は、イラクに対する武力行使の条件は整っていないとし、疑惑は残るものの、イラクが現在も大量破壊兵器を所有する証拠はないとして、安保理がこの危機を平和裏に解決する努力を続けるよう求めている。

米国のネグロポンテ国連大使が、イラクが武装解除に向けた決定を下した形跡はないと述べる一方、仏のドラサブリエール大使は、軍事的対応を議論する段階に来ていないとし、当面、新決議案を議論・採決する必要はないと述べ、イラクを平和裏に武装解除することを優先すべきだと強調した。

「3月上旬にも新決議案採択を」米国務長官が会見

来日したパウエル米国務長官は、23日、東京の米国大使館で記者会見し、3月上旬にもイラクの大量破壊兵器破棄に関する新決議案の採決を目指すと述べた。パウエル長官は、韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)新大統領就任式に出席するため訪韓の途上、日本と中国に立ち寄ったもの。

同長官は、「(国連監視検証査察委員会の)ブリックス委員長が、3月7日に追加報告を行うことから、この直後に安保理が何をすべきか決定することになる」と述べ、3月上旬にも採決に持ち込みたい意向だ。

原口国連大使が安保理演説

国連代表部の原口大使は14日、安保理で演説し、イラクが提出した申告書は「完全かつ正確な内容を含んでおらず」、査察に対しても「完全かつ自発的な協力は行っていない」と述べ、単に査察を継続・強化しても、大量破壊兵器の廃棄に結びつないとし、新たな安保理決議の採択が望ましいとの立場を示した。この上で原口大使は、「もはやイラクに残された時間は限られている」と述べ、安保理が結束して「効果的な行動」をとるよう求めた。

「決議なし攻撃」に警告アナン国連事務総長

マレーシアのクアラルンプールで開かれている非同盟諸国会議で24日、国連のアナン事務総長のスピーチが代読され、その中で同事務総長は、「今からでも戦争が避けられないわけではない」として、イラクに大量破壊兵器の放棄と査察への積極的な協力を求める一方、安保理の決議を経ないイラクへの軍事行動や軍事行動への支持は、法的に重大な疑義があると警告した。

アナン事務総長は、軍事行動が招きかねない人道上の問題を指摘、イラクでは現在でも、五才以下の子供百万人が慢性的に栄養失調で、国民五百万人に安全な水や公衆衛生が行き渡らないなど、国民は非常に危うい状況下におかれていると警告した。


Copyright (C) 2003 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.