[原子力産業新聞] 2003年3月6日 第2176号 <3面>

[英貿易産業省] エネルギー白書、2020年までのエネ供給は低CO2で

英国の貿易産業省は2月24日にエネルギー白書を公表し、2020年までに可能性のあるエネルギー供給シナリオの中で「既存の原子炉は概ね寿命を迎えることになるが、英国のCO2排出量削減の一助として必要ということになれば、後年、新たな判断が下される可能性はある」との見解を示した。

今回の白書で産業省は副題を「我々の将来エネルギー―低CO2経済の創造」としており、環境保全やエネルギー確保、競争力と社会的な目標という要素を組み合わせたエネルギー政策に必要な長期戦略像を特定する内容だと説明。昨年2月に公表されたエネルギー確保に関するレビューなどエネ政策の主要な分野に関する複数の報告書を元に策定したとしている。

白書はまず、エネルギー供給には長期的な投資が不可欠なことから、2050年までの全般的な状況を予測した上で、英国は今後二十年間に(1)環境保全(2)エネルギー自給率の低下(3)エネルギー・インフラおよび政策の刷新、という問題に取り組まねばならないと指摘。そのためには政府のエネルギー政策で次の四つの目標を定めることが重要だと強調した。すなわち、(1)CO2の排出量削減を2020年までに実質的に進展させ、2050年頃には60%を削減(2)エネ供給の信頼性を維持(3)経済成長率が持続的に向上し、生産性が上がるよう英国内外の市場において競争原理を促進(4)各家庭で十分な暖房が確保されるよう保証――など。

しかし、同白書ではこれらの達成を念頭に置いたエネルギー・ミックスの目標数値を具体的に設定しておらず、それよりも政府は長期的な対策に支えられた市場の枠組を創設すべきだと提案。これらに適切なバランスを取る権利が投資家や事業者および消費者自身に与えられることこそ、前述の目標達成に最も効果的なのだと指摘している。

原子力発電については「CO2を出さない重要なエネルギー源だ」と認めながらも、現時点の経済性では魅力的なオプションとは成り得ないとの見解を提示。放射性廃棄物の問題解決も重要な点だと指摘しており、白書としては具体的に新規の原子炉建設を提唱する考えはないと言明した。しかし、CO2排出削減目標を達成するため、将来のある時点で新規炉建設の必要性が生じる可能性を否定しておらず、その際には国民の意見を十分に斟酌し、勧告を盛り込んだ新たな白書の策定が必要になるとの考えを示している。

白書はこのほか、目標達成のための基盤およびコスト効率的な低CO2経済への移行には技術革新が重要なカギになると指摘。再生可能エネルギーやエネ効率向上技術の開発のための研究や国際協力活動を提唱している。いずれにせよ、英国が準備しなければならない将来のエネルギー供給システムは現在のものとはまったく異なるとしており、長期的な視野に立った投資や省エネ、透明性が高く開放的な市場、CO2の排出権取引などを取り組みの原則として挙げている。


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