[原子力産業新聞] 2003年3月6日 第2176号 <5面>

[保安部会] 原子力安全文化めぐり組織の在り方など議論

「原子力安全文化の在り方に関する検討会」が2月26日に開催された。この日の検討会では、原子力関係者から安全文化に関する見解を聞いた。

そのなかで、神田啓治・エネルギー政策研究所所長(京都大学名誉教授)は「現場から見た原子力安全文化」について講演し、、阪神淡路大震災が発生した直後の京都大学原子炉研究所での経験談を踏まえ、安全を第一に考える技術者の姿勢の大切さを強調。定期検査や保安検査等の現状を踏まえ、検査官の質の向上を求めた。さらに、日頃から、原子炉での作業をビデオ等の記録に残しておく態勢を作り上げていることが、安全確保に役立っている等の良好事例を紹介した。また意見交換のなかで同氏は「安全に仕事の半分の時間を割くよう、京大原子炉研究所に入る当初から指導されており、安全第一の考え方はいわば常識になっている」とし、現在も後進に対して同様の指導を行っているなど安全に対して日頃からの安全文化の醸成が、大震災直後の徹底した安全確認にも役だったことを述べた。

続いて、電力中央研究所・経済社会研究所の谷口武俊上席研究員が「組織風土とリスク管理」に関して報告。1993年から1996年まで電力会社の社員等を対象にした意識調査をもとに、今後の安全文化醸成にむけて、社員一人一人が主体的に考え、判断する能力をもつことや、そのためにマニュアル的になりがちな教育・研修の内容も変えていく必要があることを指摘した。同氏はそうした改革への取り組みを通じ、管理職クラスの意識改革、強いミドルマネジャーの育成や、管理職の研修プログラム体系(行動科学の基礎知識やファシリテーション・スキルなど)の再構築をはかる必要があることを述べた。

また、日本原子力産業会議の小寺充俊調査役が、アジア地域の原子力平和利用を推進するため原子力委員会の主導で発足した「アジア原子力協力フォーラム(FNCA)」における原子力安全文化の取り組みを紹介。オーストラリアを主導国にワークショップ開催等の協力活動が進められており、日本は技術的にこれを積極的に支援してきている。2002年度のワークショップ活動では研究炉のピアレビューも始めている等の状況を報告した。

その後、講演者を含めて各委員が意見交換し、安全を最優先に取り組むための組織改革の在り方、一方で検査の在り方を含めた規制としての安全文化醸成に関する意見交換が行われた。


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