[原子力産業新聞] 2003年3月13日 第2177号 <2面>

[日本原子力学会] 活発な議論を展開

日本原子力学会は5日、緊急討論会「もんじゅ判決と安全確保」を東京・千代田区の内幸町ホールで開催した。今年1月27日に、もんじゅ行政訴訟の控訴審について、名古屋高等裁判所金沢支部が、「もんじゅ」の原子炉設置許可は無効である旨の判決を下したことを受けて、公開討論会を行ったもの。満員のなかで行われたパネル討論では活発な議論が展開された。

パネル討論に先立ち、もんじゅ裁判の経緯と高裁判決の概要について述べた原子力安全・保安院の渡辺格・新型炉等規制課長は、判決にいたる経緯を説明するとともに、判決内容が原子力安全の基本である多重防護の考え方を否定し、絶対安全を求めているなどと指摘、今回の判決に遺憾の意を示した。原子力安全委員会の仲嶺信英・審査指針課長も、関連の審査が100回に及ぶ部会での検討を踏まえ、専門家のクロスチェックを経た妥当なものであるなどと説明、現在の知見に照らしても、もんじゅの安全審査は妥当との考え方を強調した。サイクル機構の永田敬・国際技術センター長は、もんじゅが科学的・実証的に研究開発されてきたもので、判決は科学的な論拠を欠いていると指摘。ただ同氏は今回の判決を、説明責任に対する警鐘との受け止め方も示し、今後、もんじゅに対する理解活動等に一層努力する考えを示した。

一方、今回の訴訟で原告を支援している元阪大講師の久米三四郎氏は、非科学的な判決という割に国側の説明が不十分だったと反論。国の安全審査基準の曖昧さと審査過程が十分公開されてこなかった点を指摘した。

この後のパネル討論には東工大から鳥井弘之教授と二ノ方寿教授、また消防研究所の平野敏右理事長、弁護士の山内喜明氏が参加、国の安全規制や説明責任の問題、また今回の訴訟で争点のひとつとなった床ライナの腐食といった技術的な争点も論点としてとりあげられ、意見が交わされた。

パネル討論は、会場の参加者も交えて展開された。活発な意見交換のなか、今回の裁判における国の対応に関して、説明が十分だったのかと疑問の声がでる一方、原告と国の議論の前提が違うなかで「床ライナが腐食して穴があいたら」など原告側の議論を前提に、その後の詳細な技術的な説明を国側が行うには無理があるなどと、国側の説明が不十分という指摘に対する反論もみられた。また裁判で争点になった床ライナの腐食に関する試験データなど、そのデータの解釈をめぐっては、数字が一人歩きして使われている面もあるため、学会など専門家の立場から十分に説明していく必要がある、との発言も聞かれた。

討論の進行役をつとめた同学会の成合英樹会長は、今回の公開討論の議論を踏まえて学会としても今後の対応を考えていくとの方針を述べた。


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