[原子力産業新聞] 2003年3月20日 第2178号 <1面>

[IAEA] 線源管理の改善を提唱

国際原子力機関(IAEA)は11〜13日、ウィーン市内のホーフブルク宮殿(=写真)で、「放射線源のセキュリティに関する国際会議」を開催、約120か国から700名以上の専門家等が参加した。この会議は、米国とロシアが資金を出し、IAEAとEU委員会等が開催したもので、米国からはエイブラハム・エネルギー省(DOE)長官、ロシアからルミャンツェフ・原子力省大臣も参加した。

同会議は2001年9月11日の同時多発テロ事件をうけ、放射性物質が放射能放散爆弾(ダーティー・ボム)等のテロにも使われかねない状況を踏まえ、放射線源の管理強化のために開かれた。現在、数百万個の放射線源が途上国を含む多くの国で、医療用、産業用、農業利用、研究用などに広く使われており、いくつかの国では管理のずさんさが問題になっていたことから、IAEAではとりわけ、大容量線源の管理強化の必要性を訴えていた。

挨拶に立ったエルバラダイIAEA事務局長は、世界中で、非破壊検査(NDT)用として年間1万2000個の大型線源が供給され、放射線治療用として1万個の大型線源が使用されているとし、これらは安全・セキュリティ上、特に重要であり、線源の「揺りかごから墓場まで」の管理が重要だと述べた。

エイブラハムDOE長官は、「我々は、有益な放射線源を致命的な兵器に変えてしまうテロリストの重大な脅威に対処するため、ここに集まった」と挨拶、放射線源をテロリストの手に渡さないことが最も重要とし、各政府が協力して、リスクの高い放射線源すべての所在を特定することが重要と訴えた。同長官は1987年にブラジルのゴイアニア市で起こったセシウム137汚染事故を取り上げ、この事故による死者は4名と少なかったものの、社会的パニック、11万人の被ばく検査、住民の避難や建物の取り壊しなど、社会的な影響が非常に大きかったと指摘、テロリストが放射性物質を放散した場合は更に大きな混乱が起こると警告した。

会議ではこの後、「線源の特定、捜索、回収、確保」、「放射線源の長期管理の強化」、「不法取引の阻止」などのセッションが持たれ、「放射線源の安全・セキュリティのための行動規範」改定案等を協議した。


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