[原子力産業新聞] 2003年3月20日 第2178号 <2面>

[原子力委員会] 青森で市民参加懇談会

原子力委員会は15日、「市民参加懇談会in青森」を青森市内で開いた。「知りたい情報は届いていますか」−核燃料サイクルを考える−がテーマ。会場に詰めかけた参加者からは、再処理施設や高速増殖炉原型炉もんじゅの問題、新エネルギー、原子力の経済性など幅広いテーマで、意見や質問が相次いだ。

第1部のパネル討論は科学ジャーナリストの中村浩美氏が司会・進行役をつとめ、エッセイストの芦野英子氏、東京大学大学院教授の近藤駿介氏、キャスター・ジャーナリストの蟹瀬誠一氏が参加して、原子力の情報公開のあり方や信頼の確保をめぐり意見を交わした。

情報の公開をめぐって芦野氏は、自身がこれまで弘前市を中心に原子力を勉強する活動にふれながら、個人的には十分に情報を得ているものの、「一般の人が十分に情報を得ているかは疑問」とした。近藤氏は、情報を受け取る側の問題として、言語で受けとる情報は発信者が期待する情報発信の約7%を伝えるにすぎず、音声では35%、画像(ビジュアル)では55%という法則を紹介しながら、情報の伝達はほとんどメディアを介しているため、「メディアに対する正確な情報の発信が重要」との考えを示した。蟹瀬氏は、メディアの問題に関して、米国等に比べて解説記事が少ないこと等を指摘し「原子力に関してもその分、不安をあおっている面もあるのではないか」との考えを述べた。

続いて第2部として開かれた「会場参加者からご意見を聴く会」は市民参加懇談会のコアメンバーをつとめる消費生活アドバイザーの碧海酉癸氏、九州大学大学院教授の吉岡斉氏が進行役をつとめた。

情報の公開に関して会場参加者からは「六ヶ所村の再処理施設の通水テストなどリアルタイムで知りたいと思うが、情報が届いていない」(青森市 男性)、「もんじゅの判決がでてから2カ月たつが保安院や安全委員会から何もない」(青森市 男性)など、国民への説明責任が足りないのではとの発言が聞かれた。出席した日本原燃は、再処理施設の試験の状況に関してホームページ上や定例会見でその都度情報を公開していることを説明し理解を求めた。もんじゅ判決への対応に関しては、出席した原子力安全・保安院が3月27日までに上告の理由書を最高裁に提出する準備を進めていること、また内閣府は安全委が判決に対する見解を現在まとめているなどと説明した。

エネルギー教育の必要性について会場参加者から「高校生などにアンケートしたが原子力についてわからない人が大半で8−9割が関心はないとの答えだった。教育の場でもっと関心を高める部分が必要」(青森市 男性)、「若い頃にエネルギーや原子力もことについて学んだ覚えがない。子供に教えようと思っても話ができない。エネルギーについての教育を取り入れてもらいたい」(弘前市 女性)との意見がみられた。

一連の不正問題や事故等に関しては「不祥事の中身は原子力を扱っている割にお粗末なものだと思う。すべては扱っている人間の問題で組織として危険なものをどう管理をしていくか、本質的なところをついていかないとまた同じようなことが起きるのでは」(青森市 男性)などの声も聞かれた。これについて近藤氏は、不正などによって会社がつぶれるなど市場から退場命令を受けることがない電力のような公益性の高い会社には国が適切に監視していくことが必要とし、不正問題の再発防止に関しては抜き打ち的な手法を取り入れた検査方法をとることなどを法律に明記して事業者が発電所の運転保守等に関し、健全な運営・管理を行うよう対策を進めていることを説明した。

このほか、会場からは新エネルギー開発の問題、高レベル廃棄物の処分問題、サイクルも含めたコスト問題などについて意見、質問が相次いだ。


Copyright (C) 2003 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.