[原子力産業新聞] 2003年3月27日 第2179号 <1面>

[中国] 進む新型炉開発

 欧米や日本で高速増殖炉(FBR)など新型炉の開発が停滞するなか、中国ではFBR実験炉の建屋がほぼ完成し、2005年中にも運転を開始する予定だ。また、高温ガス炉実験炉は昨年末に運転開始するなど、着々と新型炉の開発を進めている−−。本紙では現地取材から、新型炉の開発状況など、中国の原子力開発の状況をシリーズでお伝えする(8面に続く。記事、写真とも喜多記者)。

進む中国の新型炉開発@

 北京市内から高速道路で南西方向へ進む。かつては自転車の群れと少数の車が混ざり合い、東洋的カオスを醸し出していた北京市の交通事情も、ここ数年で高速道路が整備され、すっかり様変わりした。高速道路の通行量もかなり多く、間近には、個人の自動車取得による「12億人のモータリゼーション」が見えてきている。2030年には中国の自動車普及率は20%、総台数三億台近くになるとの予想もあり、石油需要等、エネルギー需給への影響も予想される。

 30分ほど走ると蘆溝橋を越える。1936年に日中戦争の発端となった橋だ。右手に「抗日戦争記念館」。「日本軍はどうしてこんな所まで来たのでしょうね」と通訳の楊さん。

 高速道路をおりて半時間で北京市房山区新鎮という村に入る。「中国原子能科学研究所(通称北京原研)」のある「中国の東海村」だ。同研究院は1950年に北京で設立、58年に新鎮村に移ってきた。ここには研究院だけでなく、中層の職員住宅、小学校、病院など職員の生活を支える施設があり、ほとんどの職員が住んでいるという。研究院の職員数は現在三千名余り、うち高級研究者は約六百名。職員数は定年等で、数年前の四千五百人から急速に減少している。

 中国原子能科学研究所では、現在、高速増殖炉実験炉(CEFR)と、60MWの先進研究炉(CARR)の二大プロジェクトが建設中。

 高速炉実験炉(=写真、完成予想図)はタンク型で熱出力65MW、20MWの発電も行う。昨年末に建屋が完成(一面左上写真)、4月から機器据え付けを開始、2005年末までに臨界を目指すという。建設費は約14億元(196億円)で、「ハイテク国家プロジェクト」から資金が出されている。

 FBRの設計・機器製造ではロシアの技術指導を受けており、仏などからもバルブ等一部の機器を購入しているものの、大型機器の70%以上は国産という。燃料は国産で、初装荷燃料はウラン燃料を使うが、その後、MOX燃料を利用する計画もある。

 ウラン資源が限られていることから、中国では2030年にFBR商業炉の運転開始を目指しており、次段階のFBR実証炉はモジュール方式とすべく、検討中とのこと。ただ日本の関係者からは、実証炉以降は現在の「ハイテク」予算から資金が出なくなるので、計画通り進むかどうか、危ぶむ声もある。

 実験炉設計の責任者徐総工程師は、高速炉で豊富な経験を持つ日本との協力を望んでおり、特に炉心等の耐震性解析や改善、安全性や運転開始前試験などでの協力を希望している。


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