[原子力産業新聞] 2003年4月3日 第2180号 <4面>

国の考え方のポイント もんじゅ訴訟判決めぐって

 所報の通り、先月28日までに国は、今年1月に示されたもんじゅ行政訴訟における設置許可無効判決について、最高裁への上告受理申し立て理由書をとりまとめて提出した。安全審査の違法性を指摘された原子力安全委員会も、技術的な観点から「安全審査の妥当性」を示す見解をとりまとめて公表した。今号で、提出された理由書、また安全委の見解から、それぞれ抜粋して、国の考え方の要点を紹介する。

 原判決は、以下に述べるとおり、最高裁判所の判例に相反する判断があるほか、法令の解釈に関する重要な事項について誤った判断があり、これらが判決に影響を及ぼすことが明らかである。

(1)上告受理申立て理由の骨子

 ア 原判決は、行政処分の無効原因は、違法及びその重大性のみで足り、その明白性を必要としないとして、最高裁判所の判例に反する見解を採り、そのため、原審の確定した事実関係を前提としても、何ら明白な違法事由が認められる余地はないのに、本件許可処分が無効であるとの誤った判断をした。

 イ 原判決は、原子炉設置許可処分の要件の一つである原子炉等規制法24条1項4号の「原子炉施設の位置、構造及び設備が(中略)災害の防止上支障がないものであること」の解釈適用において,当該原子炉施設に係る事故防止対策では重大な事故の防止を図ることができないと認定判断される場合に限り、この要件を充足しないこととなるとするのが、原子炉等規制法の正しい解釈であり、判例理論であると解されるところ、同規定の解釈を誤り、放射性物質が周辺の環境に放散される事態の発生の抑止等に関する事項の安全審査の過程の一部に瑕疵があり、その結果として、上記事態の発生の「具体的危険性を否定できない」という判断のみによって原子炉設置許可処分は常に違法となる(さらに違法の重大性も肯定されるともいう。)との見解を採ったため、原審の確定した事実関係を前提としても、原判決のいう違法事由のいずれについても同規定の要件の不充足の違法は認められないにもかかわらず、単なる可能性ないし危惧の念から「具体的危険性」を否定できないとして、独自の解釈に依拠して本件許可処分が無効であると判断した。

 ウ また、上記要件の審査(安全審査)については,主務大臣及び原子力安全委員会の専門技術的知見に基づいた判断が尊重されるべきであり、安全審査を違法というためには,その尊重の要請を覆してもなお専門技術的判断が不合理であることが具体的根拠をもって認定判断されなければならないとするのが,原子炉等規制法の正しい解釈であり、判例理論であると解されるところ、原審の確定した事実関係を前提としても、そのような具体的根拠は認められないにもかかわらず、原判決は、専門技術的判断の尊重の観点を欠いたため、本件許可処分が無効であると判断した。

 以上のとおり、原判決には、最高裁判所の判例と相反する判断があるとともに、法令の解釈に関する重要な事項が含まれる。よって、本件上告受理申立ては受理されるべきである。

 そして、上記の判断は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反であり、結局、原判決は、確定した事実について法令の適用を誤ったものであるから、原判決を破棄し、控訴を棄却すべきである。

 なお、原判決の認定には本件原子炉施設等に関する技術的事項について幾つもの誤りがある。これらの中には、明らかな経験則違反というべきものも含まれており、本件訴訟の審理、判断の前提ないし背景となる事項を理解する上での妨げとなるおそれがあるので、誤りの主要なものを別表(略)において指摘することとする。

(2)本上告受理申立て理由書の構成

 以下においては、まず、本件原子炉施設の概要、原子炉等規制法における安全規制の体系等の本件訴訟の審理、判断の前提ないし背景となる事項の要点を説明し(第2)、原判決に法令の解釈に関する重要な事項の誤り及び最高裁判所の判例に相反する判断があることを、前提となる基本的な法解釈及び判例理論の要点と併せて、法的観点から要約して述べた上で(第3ないし第5)、原判決の判示する各個の争点に即して、原判決の判断の法令の解釈に関する重要な事項の誤り及び最高裁判所の判例に相反する判断を明らかにし(第6ないし第8)、結論に至る(第9)。このように、本件上告受理申立て理由は、第3ないし第5においては法的観点から要約して述べ、第6ないし第8においては各個の争点に関する原判決の判示に即して述べることとするが、それは、総体としては同じ上告受理申立て理由について、理解の便宜上、整理や説明の観点を変えて述べるものである。(後略)


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