[原子力産業新聞] 2003年4月3日 第2180号 <4面> |
[原子力安全委員会] 技術的論点について見解2面所報の通り、原子力安全委員会は先月の26日、もんじゅ判決に関する技術的な論点についての見解をとりまとめた。そのなかで同委は、「もんじゅの設置許可にかかる安全審査は、幅広い分野にわたる専門家により、高速増殖炉に関する国内外の研究開発の成果を参照しつつ、百回近くに及ぶ会合における調査審議と現地調査等を重ねて結論を得たものである」とし、「その結論は、現在の科学技術的知見に照らして見直しても、なお妥当であると判断される」との考えを示している。今号で、同委の見解のポイントを「まとめ」の部分から抜粋し紹介する。 原子炉施設の安全確保及びそれに対する原子力安全委員会の安全審査に係る基本的事項を整理すると、以下のとおりである。 1、 原子炉施設の安全確保は、設計、建設、運転の全活動を通じ、多段階にわたる。このうち、設計は、その後の建設、運転の基礎となるものであることから、とくにその基本設計に関し、安全確保上の検討をあらかじめ十分に加えておくことが重要であり、原子力安全委員会が、その基本設計の妥当性に関し、設置許可申請書にもとづく規制行政庁の安全審査結果を審査することとなっている。 2、原子炉施設の設計は、多重防護の思想の下、内蔵されている放射性物質による影響が周囲の環境に及ばないよう多重の障壁を設けて、災害の防止を図る、との考え方にもとづいている。原子力安全委員会の安全審査においては、当該原子炉施設の基本設計がこの考え方によってなされていることを確認する。 3、原子炉施設の安全審査には、広範かつ多様な科学技術分野に関する高度な知見を必要としており、このため、原子力安全委員会のもとに、原子炉安全専門審査会を設置し、調査審議を行っている。 4、原子力安全委員会は、安全審査の客観性を担保するため、審査の基準となる安全設計審査指針、安全評価審査指針等の審査指針を策定している。これらの審査指針は、科学技術的知見の進歩や拡大に応じて、適宜、必要な改定がなされる。原子炉安全専門審査会は、同指針を参考に審査を行う。もんじゅの安全審査についても、上記の考え方と手順に従って評価の考え方にもとづき審査がなされており、その審査結果は、現在でも、なお妥当なものである。すなわち、もんじゅと同型のナトリウム冷却高速炉については、もんじゅの審査以降、多くの安全研究や、先行炉の運転実績、あるいは数々の事象・事故を通じて、新たに各種の科学技術的知見が得られている。しかし、これらの知見を勘案しても、審査結果の変更の必要性を示唆するものはない。もんじゅ判決において言及されている技術的論点に対する当委員会の見解を要約すれば、次のとおりである。 (1)「2次冷却材漏えい事故」については、今回の設置変更に係る安全審査において、漏えいナトリウムとコンクリート床面との直接接触は鋼製の床ライナの敷設によって防止できるという設置許可申請段階の安全審査結果を変更する必要はないことが確認されている。また、漏えいがあった場合でも、3つの冷却系統の独立性が維持され他の健全な系統に2次的な損傷を与えないことから、原子炉の冷却は可能であり、よって原子炉の安全性が保たれることが、現在の知見にもとづく評価によっても確認されている。 (2)「蒸気発生器伝熱管破損事故」については、ナトリウム反応を検知し伝熱管の水・蒸気を抜くことにより高温ラプチャの発生は防止できること、また、破損事故によって原子炉の健全性に影響は及ばないことが、最初の設置許可申請時の審査、およびその後に得られた知見等にもとづく審査のいずれにおいても確認されている。 (3)「炉心崩壊事故」については、設置許可申請時の安全審査において、「技術的には起こるとは考えられない事象」として評価されたことは適切であり、最新知見を踏まえても、機械的エネルギーの最大値に関する当時の評価は適切な保守性を見込んでおり、妥当なものであったことが確認されている。 (4)安全設計の妥当性を評価するために行う「事故」などの評価における「単一故障」の仮定は、個々の事象の詳細な解析や検討にもとづいて適切に判断されており、妥当である。 |