[原子力産業新聞] 2003年4月10日 第2181号 <4,5面>

[米DOE] 先進核燃料サイクル構想(AFCI)の概要

 米国エネルギー省(DOE)は1月、再処理路線への復帰の可能性を含む大胆な新政策「先進核燃料サイクル構想(AFCI)」をまとめ、議会に送付した。同構想では、処分される高レベル廃棄物(使用済み燃料)の体積を減らし、また使用済み燃料中の長寿命アクチノイドを分離・消滅させるとともに、未燃焼のウラン等を利用するため、新たな湿式再処理(UREX+)と消滅処理を含む先進核燃料サイクルの研究・開発を提案している。今号ではこの報告書から、サマリーと概観の部分を掲載する。


要約 中期と長期の2目標

 この報告書はDOEによって、2002年エネルギー・水資源予算法に付随する議会報告書の中で提示された、議会からの指示への回答として作成されたものである。同議会報告書において議会はDOEに対し、同省の使用済み燃料の分離・消滅処理研究活動に関する複数の質問に回答するよう指示している。

 本報告書は、議会の指示に対するDOEの回答である。本報告書の中には、ノーベル賞受賞者であるバートン・リヒター博士が議長を務める原子力研究諮問委員会(NERAC)の先進核変換技術(ANTT)小委員会から情報提供や助言を受けて検討した戦略や取り組み方法が含まれている。

 本報告書に示されている情報は、分離・消滅処理技術の研究開発の現状を反映している。DOEとしては、議会の質問への回答の作成過程において、その質問の多くに関し、意味のある、または適切な返答を行なうには、研究があまりにも初期段階であることを認識せざるを得なかった。従って、質問に対するDOEの現時点での回答は予備的であったり、最大限正確と考えられる予想値であったりする点を十分理解頂きたい。

 議会が提示した先進燃料サイクル技術に関する質問回答するためには、さらなる研究が必要であり、本報告書ではその研究の概要も提示した。前述の質問に対する回答を、本報告書を作成するために行なわれた作業に基づいて、以下に示す。

@各種の処理で出る放射性廃棄物の種類と量の全容を明らかにし、化学・熱処理、加速器駆動による消滅処理、高速炉消滅処理の可能な選択肢を比較せよ。

回答 DOEのこれらの技術に関する理解は、その選択肢を概念的なレベルで比較するためには十分である。しかし、コストや各種処理から発生する放射性廃棄物の種類と量などに関しては、限られた情報しか入手できていない。本報告書にあるとおり、使用済み燃料の科学的処理の最有力候補である「ウラン抽出プラス(UREX+)」法は、まだ構想段階を出ていない。DOEの第四世代炉研究が大部分を担当する消滅処理システムもやはり、開発のごく初期段階にある。

A必要な施設すべての建設、運転、デコミッショニング、除染というライフ・サイクル全体にかかるコストの見積もりを提出せよ。

回答 必要な施設にかかるコストの正確な情報は、現在のところ存在しない。今後のどのような研究においても、意味のあるコストの見積もりを行なうことは、重要な作業である。

Bこれらの様々な技術の核拡散抵抗性を比較せよ。

回答 核拡散抵抗性の意味のある比較をするために妥当な測定規準は、未だ存在しない。DOEは国際社会と共に、核拡散抵抗性測定基準の合意枠組みを設定しようと努力しているが、その実現には、本報告書の発行以降少なくとも一年程度かかると見られている。

C再処理や消滅処理に必要な様々な新しい処理・処分施設サイト選定のための戦略を提示せよ。

回答 この質問に対しては、使用する技術の選定と必要な環境影響調査が行なわれてからでないと回答できない。本報告書ではサイティングに関しては述べることができない。

Dすべての比較の基準として、現在米国で採用されているワンススルー・サイクルと、地層処分場に処分される予定の使用済み燃料の量を使用すること。

回答 本報告書ではその方法を用いている。たとえば、現在のワンススルー燃料サイクルで発生する使用済み燃料は、ウラン鉱石程度の毒性まで崩壊するのに、およそ三十万年かかる。もしこの報告書で提言されている研究が成功すれば、先進核燃料サイクル技術の応用により、わずか千年程度で同じ毒性レベルまで崩壊するようにできる。

E地層処分場に処分が予定されている使用済み燃料を処分するのに十分な容量を想定した上で、再処理や消滅処理の各選択肢に必要な新たな処理・処分施設のサイト選定に向けたDOEの戦略を提示せよ。

回答 施設の具体的サイトを選定するためには、明らかに研究があまりにも初期すぎる。しかしDOEでは、米国内で建設する先進核燃料サイクル施設はすべて、民間企業によって建設・運転されるものと考えている。またこれらの企業に対しては、放射性廃棄物管理技術を実施するという、国家的利益を反映した優遇措置が適用される。

 使用済み核燃料管理の研究継続は、米国や他の国々が原子力利用を継続・拡大していくために重要である。このテーマに関して、多くの国々が先端の研究開発を行なっているが、核拡散抵抗性を持った先端技術を確実に、使用済み核燃料管理の不可欠な部分として組み込んでいくためにも、米国が指導的役割を果たすことが重要である。これらの技術によって、廃棄物の処分コストを削減できるだけでなく、商業運転によって発生する使用済み燃料中のプルトニウム含有量を大幅に減らすことにより、国家安全保障が高まるといった他の恩恵も得られる。

 本報告書の本文でも論じている通り、これまで、先進核燃料サイクル構想(AFCI)の開発要素のうち、並行研究が可能な二つの要素の研究を中心に行なわれてきた。すなわち、「AFCIシリーズ1」と呼ばれている、現在の原子炉技術への先端技術の応用を重視する中期的技術開発と、「AFCIシリーズ2」と呼ばれている、放射性毒性や熱負荷問題の完全解決に向けた長期的技術開発である。

 AFCIシリーズ1は、使用済み核燃料に関連する中期的な問題を取り扱っている。具体的には、使用済み核燃料の96%を占めるウランを抽出することによって地層処分を必要とする物質の体積を減らすこと、また使用済み核燃料に含まれるプルトニウムの大部分を破壊することで核拡散の危険性を減らすことに取り組んでいる。これらの技術は現在のインフラの一部として採用することが可能だし、米国内の既存および将来の軽水炉原子力発電所と協調しての利用が可能である。これらの技術の採用により、ユッカ・マウンテンで計画されている処分場のより有効な利用が可能なような時間的枠組みで実行可能である。

 AFCIシリーズ2は使用済み核燃料に関連する長期的な問題を解決するものだ。具体的には、地層処分場に送られる高レベル放射性廃棄物の長期的な放射性毒性や熱負荷を大幅に低減できる核燃料サイクル技術の開発である。これらの技術の実行のためには、第四世代原子力システムの実用化が必要であるため、これはより長期的な選択肢として位置付けられるべきである。もし成功すれば、この技術によって、商業施設から発生し地下に処分される使用済み燃料の毒性を、約千年後には天然ウラン鉱石同等のレベルにまで下げることができる。また、地層処分場の収容能力を拡大できる。さらに、この分野の研究が成功すれば、長期的な原子力利用に対し、非常に長期的で持続可能な核燃料の供給を、何百年にもわたって確保できる。

 本報告書で後述するとおり、これらの二つの開発要素を切り離すことはできない。先進核燃料サイクル研究の目標は、AFCIシリーズ2の技術と第四世代原子力システムの開発が成功してはじめて達成される。しかし、AFCIシリーズ2は、AFCIシリーズ1の研究が実用レベルまで到達することを前提としている。すなわち、使用済み燃料中の大量の放射性物質を処理するために、シリーズ1の技術が必要となる。

概観 再処理と消滅処理の必要性

 政府は、国家エネルギー政策に反映されているとおり、原子力が将来的な国家のエネルギー・セキュリティにおいて大きな役割を果たしうるとの結論に達した。原子力は、地球温暖化ガスを含む有害な汚染物質を放出することなく、経済的にベースロード電力を生産することのできる、唯一の利用可能な技術である。原子力発電所は米国の電力需要の約五分の一を発電しており、しかもそれを経済的、安全かつ信頼性の高い形で行なっている。

 原子力は有害な汚染物質を放出しないものの、使用済み燃料を発生する。これは、この先何千年、何万年にわたって高度の毒性を持ち続けるため、社会的、政治的、規制上、技術的な大きな課題となっている。

 過去3年間にわたって、DOEとその研究所、またDOEと共同研究を進めている大学や民間企業は、国際社会とともに、使用済み燃料処分の難しさを軽減できる先端原子力技術の可能性を模索してきた。

 AFCI等は、使用済み燃料再処理の基本となる三つの目標達成のために、最も効果的な技術を見出すことを目標としている。

@使用済み燃料の体積を減らす。これは、もとの使用済み燃料よりも体積の小さい高レベル廃棄物にすることで達成される。

A長寿命で毒性の高い要素を分離する。これらの元素(プルトニウムやアメリシウムなどのアクチノイド)は処分が最も難しい。

B使用済み燃料中の貴重なエネルギー源を再利用する。使用済み燃料中の毒性の高い元素を破壊する一方、燃料中に含まれる貴重なエネルギーを回収する方法を見出す。

 これらを達成するためには、安全で、コスト効率がよく、環境に優しく、かつ核拡散抵抗性がある、複雑な化学的・核反応プロセスが必要となる。本報告書の以下の二項目では、使用済み燃料の処理や消滅処理のための様々な技術的アプローチを模索するために、DOEがこれまで行なってきた取り組みについて報告し、さらにこれらの技術の今後の開発のために、考慮すべきステップについて概説する。

 どのような将来の使用済み燃料処理や消滅処理技術をもってしても、地層処分場の必要性がなくなることはないが、長期的な視点からは、先端原子力技術により、将来的に地層処分場の運転コストと困難さ、および複数の処分場を建設する技術的必要性などを減らすことが可能ではないかと考えている。それによって、原子力の利用拡大への重大な長期的障害を減らすことができるかもしれない。

 使用済み燃料の処理や消滅処理技術が、二つ目の処分場の必要性を大幅に減らしてくれることに加え、この技術は将来的に、第一の地層処分場に貯蔵された使用済み燃料の毒性の緩和を可能にしてくれるかもしれない。使用済み燃料中の、最も毒性が高く長寿命の放射性物質を破壊することにより、商業施設から出て処分場に運ばれた放射性廃棄物の毒性が天然ウラン鉱石の毒性と同程度まで崩壊するのにかかる時間を、三百分の一ほどへ、大幅に短縮できるかもしれない。深層地層処分場の必要性は残るが、処分場にかかるコストと性能の最適化が可能になる。

 経済協力開発機構(OECD)など、最近出された見積もりによると、商業規模で使用済み燃料の再処理と消滅処理を行なった場合、発電コスト全体が少なくとも10%上がるという。この分析は、加速器利用施設と原子炉利用施設の双方のシナリオに基づいているが、DOEの見解によると、この分析はあまりにも既存の技術に頼りすぎている。DOEは、現在よりもはるかに効率的でコスト効率の高い技術的アプローチが必要であり、使用済み燃料の処理や消滅処理にかかるコストを正確に見積もるには、あまりにも時期尚早と考えている。本報告書では、使用済み燃料の処理や消滅処理技術について、その利点、および見積もり額の算出のための研究計画を記述している。

 この新しい技術をあてにして将来設計をするには、あまりにも時期が早すぎる。そのためDOEは、米国の原子力の将来に関するすべての分析においては、現在の燃料サイクル技術の継続的使用と、2010年代の始めの深層地層処分場の使用開始を前提にすべきと考えている。もし米国で原子力発電所を長期的に運転し続けるのであれば、大量の使用済み燃料が発生し続けることはわかっている。米国内に新たな原子力発電所が今後全く建設されなくても、既存の原子力発電所の大半は2030年代まで運転を継続できると見られている。

高レベル放射性廃棄物問題

 現在、米国には4万4000トンの使用済み燃料が商業用原子力施設内にあり、さらに毎年、およそ2000トンの使用済み燃料が発生している。この率でいけば、6万3000トンの民生用原子力施設からの使用済み燃料の受け入れを計画している地層処分場は、2015年までにその法的上限に達してしまう(図T−1参照)。

 その結果、原子力発電所で発生する使用済み燃料の量は、国家エネルギー政策での新原子力発電所の建設に対する長期的な課題となりうる。使用済み燃料は、体積では他の発電施設や産業施設から出る廃棄物よりもはるかに少ないが、その取り扱いは、原子力長期的計画で扱わなければならない。高レベル放射性廃棄物の体積は、地層処分場の最終コストに直接的影響を与える。処分場に運ばれる廃棄物が増えるにつれ、より多くの埋設用トンネルが必要となる。それでも、2001年9月11日の同時多発テロの結果明らかになったように、使用済み燃料を全国130の施設にバラバラに残しておくよりは、一か所の地下施設に運び込む方が、はるかに望ましい。

 考慮すべきもう一つの要素は、使用済み燃料は、原子炉から出して数十年経過すれば、プルトニウムの便利な貯蔵庫になるという点である。図T−2を見ると、国内には、何百トンものプルトニウムが使用済み燃料の中で蓄積されていることがわかる。使用済み燃料の扱いを困難かつ高価なものにしている核分裂成生物質が、時間の経過に伴って崩壊すれば、処分場から核物質を五十年から百年後には回収し、プルトニウム分離に利用することができる。米国は世界中で累積しているプルトニウムに危機感を強めており、これが世界的にも重大な核拡散問題につながると考えている。

 また、長期的将来において、ウランが石油や天然ガス同様に、無尽蔵の資源ではなくなる。世界原子力協会(WNC)等の専門機関は、2050〜80年の間に、世界の原子力発電所は、ウランの深刻な不足に直面すると予測している。

 エナジー・リソーシズ・インターナショナル(ERI)社が実施したごく最近の詳細にわたる分析によると、この問題性は、状況によってはもっと早い時期に顕在化する可能性もあるという。図T−3に示したとおり、現在知られている世界のウラン資源(鉱山とロシアの高濃縮ウランなど政府の備蓄量を含む)は、今後数十年間は核燃料の需要が伸びないと想定しても、その間に2030年に必要と予想される年間需要の半分しか供給できないレベルに下がると予測している。ということは、すでに採掘されたウランの大部分が、2030年までにほぼ消費されてしまうということになる。しかし、もし原子力が2030年までに、50%成長した場合には、需要に応えるため、ウラン生産量は三倍近く増加しなければならない。この分析から、採掘されるウランから作られる核燃料は、そう遠くない将来に、原子力の成長の可能性を阻む深刻な問題となりうることが判る。

 もしDOE長官が発表した「原子力2010構想」がうまくいけば、米国の原子力発電所は少なくとも2070年までは運転を続けることになる。したがって、わが国の核燃料資源の最も効率的な利用を可能にする技術開発は、米国の長期的なエネルギー独立性を支えることとなる。さらに、現在、全国の原子力発電所内に貯蔵されている4万4000トンの使用済み燃料には、60億バレルの石油以上のエネルギー量、つまり米国の輸入石油2年分のエネルギーが含まれている。したがってこれは、エネルギー安全保障と密接に関連している。

AFCIの運営方針 核不拡散政策上の課題

 過去3年にわたって、AAAプログラムは、AFCIの課題を洗い出すために必要な技術計画および実験開発を行なうために、国立研究所や産業界に非常に強力な技術管理チームを作り上げた。これらの研究開発チームには、多数の国立研究所やネバダ大学ラスベガス校(UNLV)などの300人以上の科学者や技術者が含まれている。加速器駆動システムは、同プログラムの毒性低減目標を達成するために必要な「最後の燃焼」において、重要な役割を果たす可能性がある。

 すべての段階の目標を達成しようとするAAAプログラムでは、この技術開発に関心を持つ海外のパートナーとの強力な協力計画が重要な要素になっている。現在DOEは、これらの技術分野で研究協力を進めるため、他国との間で二件の正式な合意を交わしており、1億ドル以上の価値のある分析実験データを入手した。DOEは国際的に、これらの相手国と情報交換を継続して行なっていく一方、それ以外の国とも、同様の協力関係を構築する可能性を模索する。さらに、2002年の主要国首脳会議でブッシュ大統領とプーチン大統領は、核拡散抵抗性を持つ先進燃料サイクル技術について、将来的に協力していけそうな分野の調査を共同で行なうよう、それぞれの政府に指示した。DOEがロシアと接触したところ、ロシアは確実に、米国のAFCIプログラムの重要なパートナーとなると考えられた。ロシアの科学者達は、非常に興味深い先進燃料サイクル技術を幅広く研究してきており、また、将来の共同研究に重要となる施設の運転も継続して行なっている。しかし共同研究は、現在そのような協力を阻んでいる政治的課題が解決されれば、初めて可能となる。

 外交政策に加え、米国は使用済み燃料の再処理や消滅処理に関して、国内政策の検討も行う必要がある。これらの技術の研究はDOEの管轄だが、核拡散抵抗性を持つ先端使用済み燃料処理や消滅処理技術の実用化には、現在の国家政策の検討、場合によっては修正する必要もあるかもしれない。「国家エネルギー政策」の勧告には、以下のように記されている。

 「先進核燃料サイクルや次世代原子力技術の開発については、米国は、各種の処理で発生する放射性廃棄物の種類と量を縮少し、核拡散抵抗性を高める燃料の処理方法(熱処理など)の研究、開発、実用化を可能とすべく、政策を検討し直す必要がある。」

 古い技術ではプルトニウムを分離し密かに兵器開発に利用できることから、その核拡散性を憂慮し、米国はある種の使用済み燃料技術の利用を阻止しようとしていた時期もあった。もし核拡散抵抗性を持った燃料サイクル技術の研究が成功すれば、米国は、核拡散精のある技術の問題解決に役立つだけでなく、現在の米国の方策が持つ核拡散抵抗性を強化できる技術を提供する立場になる。

 このような技術は、研究開発のために多額の投資が新たに行なわれなければ、進めていくことができない。さらに、これらの技術を実用化するためには、新たな商業プラントのために、官民が何十億ドルという支出をしなければならない。正確な見積もり額を出すためには、この報告書で述べたような研究、開発、設計作業が必要である。

DOEの統合的原子力研究

 DOEは原子力の将来に向け、多くの課題に取り組むための研究開発計画に着手した。2001年に米国と海外八か国は、将来に向けた国際的な原子力研究開発の共通目標を作るため、第四代国際フォーラム(GIF)を設立(現在十か国がGIFに加盟している)、「第四世代技術ロードマップ」を作成した。このロードマップは、六つの原子力システムを網羅している。これらは、原子力の利用を促進するのに最も役立つシステム、すなわち、経済性の高い目標、核拡散やテロに対する抵抗性、持続可能性、および安全性と信頼性を有するとGIFが判断したものだ。これらがもし成功すれば、他のエネルギー源に対しても競争力のあるコストで、電力、水素、およびプロセスヒートを供給できる、次世代のエネルギー源へとつながる可能性がある。世界中で100人以上の科学・技術者がこの研究に参加しており、米国は現在加盟国と共に、相互利益にかなった分野を選んで共同研究を進めるべく、話し合いを行なっている。

 このロードマップは、原子力システム全体について考察するように作られており、その中には原子炉技術だけでなく、核燃料サイクル技術も含まれている。

 DOEは様々な原子力システムを詳細に分析・研究した結果、将来的な研究計画に向けたDOEの選択肢が判断できるようになってきた。これらの研究では、加速器駆動システムを使う場合と使わない場合の両方について、米国の使用済み核燃料を消滅処理するための様々な方法の検証を行なった。これらは、利用されなければ処分場で処分されてしまう物質からエネルギーを回収する一方で、米国の処分場計画を最も効率よく進めることを目的としている。

 使用済み燃料処理の分野では、環境を配慮しかつ核拡散抵抗性を持つ湿式分離の先端技術(ウラン抽出技術、いわゆるUREXとUREX+)の開発を進めた。2002年8月にサバンナリバー技術センターで実施されたUREXのホット試験から得られた最初の分析結果では、実際に軽水炉(LWR)で使用された燃料からのウラン回収率は99.9%を超え、回収ウランの汚染レベルは、原子力規制委員会が定めている現在の基準Cクラスを下回った。この実験の成功により、軽水炉から出る使用済み燃料から取り出したウランは、非高レベル放射性廃棄物として処分、貯蔵、利用が可能なこと(低レベル放射性廃棄物Cクラス該当)がわかった。

 これら二つのプログラムによるこれまでの研究により、長期的な研究計画のひとつとして、高速炉と、核拡散抵抗性を持った先端使用済み燃料処理技術をうまく組み合わせる研究が必要ということが明らかになった。加速器ベースのシステムなど、放射性廃棄物に少量含まれる、毒性が高く長寿命の放射性核種を破壊できる技術も、研究計画を検討する中で、注目すべき役割を果た可能性がある。

 高レベル放射性廃棄物管理に関連する課題に取り組むことにより、中期的にも長期的にも、将来的研究の検討方向が示されていくだろう。

 まとめると、中期的取り組み課題は、

  • 高レベル放射性廃棄物の体積を縮小する
  • 計画されている地層処分場の容量を増大させる
  • 2か所目の処分場の技術的必要性を減らす
  • 使用済み燃料中のプルトニウムを減らす
  • 使用済み燃料に含まれるエネルギーの回収を可能にする――など。

     そして長期的課題は

  • 使用済み燃料の毒性を下げる
  • 使用済み燃料の長期的発熱量を減らす
  • 原子力発電に持続的に燃料を供給する
  • 将来の第四世代原子力システムの運転を支える

 このように、プログラムの技術的目標がより明確に定義づけられたことを受け、DOEは、AFCIを通じ、使用済み燃料を再処理や消滅処理するために、核拡散抵抗性を持った先端技術を開発する。AFCIは以下の2つの主要な要素から成り立っている。

  • AFCIシリーズ1−使用済み燃料に関する中期的課題、特に地層処分を必要とする物質の体積と発熱を減少させることを中心に取り組む。この研究は、米国の最初の処分場に役立つだけでなく、次の処分場の技術的要件を減らすことができる。この第二処分場について、DOEは2007年から2010年の間に勧告を行なわなければならない。この研究分野には、軽水炉や高温ガス炉の商業用運転で発生する大量のプルトニウムの破壊を可能とする、核拡散抵抗性のプロセスや燃料の研究開発が含まれる。
  • AFCIシリーズ2−使用済み燃料に関する長期的課題に取り組む。具体的には、地層処分場に送られる高レベル放射性廃棄物が持つ、長期的放射性毒性と熱負荷を激減させる燃料サイクル技術を探求し、第四世代燃料サイクルの開発可能性を支援する。 

 重要な点は、AFCIシリーズ1とシリーズ2は相互補完的だいうことであり、その結果、多段階から成る使用済み燃料の処理・消滅処理の先端技術開発の一部として、互いに連携させて管理されることになる。たとえば、AFCIシリーズ1で明らかになった処理技術が、シリーズ2で目標としている、より先進方法の貴重なフロントエンドのステップになるかもしれない。これらの技術計画を統合することは、研究開発全体の成功のために不可欠である。

 この研究が最も成功した場合でも、国内の使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物を貯蔵する深層地層処分場の建設を、可能な限りのスピードで推進することが必要である。上記に示したような積極的な計画により、新しい再処理・消滅処理燃料施設が建設されたとしても、すべての使用済み燃料の処理が終わるまでは、これらの使用済み燃料を、安全で、テロ対策が万全で、環境に配慮した場所で長期にわたって保管しなければならない。さらに、消滅処理の結果できる生成物は、理論的には使用済み燃料より毒性が低く、毒性期間もはるかに短いが、それでもまだ何百年(おそらく千年)にわたって高いレベルの放射性を持つ。そのため、AFCIが処分場の安全性と核拡散抵抗性を高めながら、地層処分場にかかるコストを大幅に削減してくれるのではないかとの期待は持ち続ける一方、DOEの地層処分場プロジェクトを進めることには、多大な意義がある。


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