[原子力産業新聞] 2003年4月25日 第2183号 <1面>

[原産年次大会] 国民の理解を求めて−原子力のさらなる発展のために

 既報の通り、日本原子力産業会議は15日〜17日の3日間、福井県の敦賀市および福井市において、第36回原産年次大会を開催した。「国民の理解を求めて−−原子力のさらなる発展のために」を基調テーマに、7つのセッション・3つの特別講演をはじめ、一般市民を含む各分野からの参加者を得た意見交換会、さらには地元の団体等の参加による様々なアトラクションが行われた今大会には、日本を含む17か国・地域、6国際機関から1300名以上が参加した。今号では、各セッションの詳細を紹介する。

西澤原産会長 所信表明 原子力利用拡大は必須 「もんじゅ」の早期運転再開を

 我々の住む地球では、産業革命以来200年以上、生活の利便性、快適性を求めて、化石燃料を燃やし続けている。その結果、地球上では、大気汚染や酸性雨の問題、さらに温暖化ガスの排出による地球温暖化問題が現れて来ている。

 それに気付いた我々は、世界の国々と気候変動問題について議論する会議を開き、この難しい問題に取組んでいる。1997年に京都で開催された第3回綿約国会議においては、いわゆる京都議定書を決めた。その約束事を守るためには、化石燃料をこれ以上多く燃やすことは避けなければならない。むしろ減らさなければならない。しかし、私達が今後とも豊な生活を維持し、高齢化などの社会的な変化に対応していくためには、地球環境に悪影響を与えない方法でエネルギーを安定的に確保していくことが必要で、発電時に炭酸ガスを出さない原子力発電が大きな役割を果たさねばならない。

 私達人類は、火を使うことから始まって、いろいろのエネルギーを自分達の生活を豊なものにするために利用してきた。そのエネルギーについて、途上国が先進国なみに利用すると、今の3倍のエネルギーが必要になる。それでなくても、現状の利用が進むと、化石燃料資源は、石炭を除いてこの21世紀中に、深刻な状態になる。

 そのような中で、日本のエネルギー事情はどうだろうか。 このたびのイラク戦争によって、私達の生活基盤が、この極めて不安定な地に依存しているのだということを、改めて考えさせられる。そのために我が国では、準国産エネルギーとみなせる原子力エネルギーを導入する政策を取っているが、その割合も一次エネルギー供給量で見ると、まだ12%程度に過ぎない。エネルギーの大半を海外に依存している日本の脆弱な体質を少しでも強化していくためには、どうしても原子力利用を拡大していく必要があるのだ。

 ところで、原子力の核燃料については、高速増殖炉により作り出せるプルトニウムを活用する核燃料サイクルを完成させれば、数千年、燃料に不自由することはない。「もんじゅ」はそのために私達が開発した原型炉だ。今回の司法の判断は遺憾ではあるが、この間題を早く解決させたいと思う。そして、是非とも「もんじゅ」の早期運転にこぎつけたいと思う。

 原子力は、私達が平和の目的で利用すれば、必ずや有用な資源として役立つものであるとの信念で、今日まで利用している。それは高度な技術であるために、それの取扱いは、専門家に委ねることになる。従って、それを利用する一般の人々は、専門家を信頼することで原子力の利用は、成り立っている。

 しかし、最近の一連の不祥事により、その最も大切な信頼関係に「ひび」が入りかけている。 原子力を人類のために役立つものとして正しく取り扱うためには、私達は、原子力の安全に対する一般の人々の不安に対しても、常に共感する姿勢を持っていなければならない。高度な技術を駆使する専門家であるからこそ、誰よりも強く自己を律する心構え、倫理を持っていなくてはならないのだ。

 原子力には、エネルギーとしての利用だけでなく、放射線の利用として「脳腫瘍のような癌の治療」などにも役立てることが出来る。私達の手でこの有益に利用することの出来る原子力を正しく取り扱えるようにしたいものと思う。


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