[原子力産業新聞] 2003年4月25日 第2183号 <7面>

[日本学術会議] 原子力学の再構築を

 日本学術会議はこのほど、「人類社会に調和した原子力学の再構築」と題する報告書をとりまとめた。原子力工学研究連絡委員会とエネルギー・資源工学研究連絡委員会核工学専門委員会が検討にあたり、まとめたもの。

 報告は、昨今の状況を踏まえて、「原子力に携わる技術者の行動、社会との関わり等における問題が数多く生じ、国民の不安感や不信感が著しく増すなど、憂慮すべき状況にあり、早急に検討のうえそれらの解決が求められている」との認識のもとに、従来の原子力学からパラダイム転換を図り、人類社会に調和した原子力学として再構築し、それに沿った学術としての進め方と教育の在り方を中心に今後の方策をまとめた。

 現状と問題点について報告は、「今日原子力の社会との乖離が増すとともに、原子力の利用のみならず研究や開発は沈滞し、それに加えて原子力を志望する学生数も減少し、原子力学の研究ならびに教育と人材養成は危機に瀕している」と指摘。「原子力学は本来ミクロの世界の物理学の応用に源を発し、幅広い可能性を有すことに加え、社会とのかかわりが深いにもかかわらず、原子力学の一部分に偏るなど、研究面でも自ら枠をはめ、社会との連携も不十分であった」との見解を示している。さらに「大学、国公立研究機関および民間の協力体制が十分機能せず、原子力の研究、開発と利用の展開があまり効率的ではなかった」としている。

 そのうえで、原子力学の研究者および関連する技術者は、まずその倫理を弁え、社会のための科学技術であることを改めて認識し、これまでの工学の枠組みを超え、人文社会科学を含む広い分野の人々と連携や協力を図ることが必要とした。また資源とエネルギーの安定供給と地球環境の保全、ならびに人類社会の持続ある発展にとって、原子力発電とその核燃料サイクルは今後とも重要とし、国民に理解される形で内容を公開し、説明責任を果たすことにより、社会的受容性を回復することが第一−等の提言を示した。

(次号に報告の概要を掲載予定)


Copyright (C) 2003 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.