[原子力産業新聞] 2003年5月8日 第2184号 <3面>

[英議会・科学技術委] 低CO2経済の実現で報告書

 英国議会下院の科学技術委員会は4月3日、低炭素燃料による経済実現のための研究開発・実証活動(RD&D)に対する公的機関の投資状況調査報告書を公表し、政府の原子力政策に関する決定の遅れを批判するとともに、「原子力こそ低炭素発電技術の主力とすべきだ」との見解を表明した。

 「非炭素燃料経済に向けて――その研究開発と実証活動」と題された報告書は11名の議員(うち7名は労働党員)で構成される科技委員会が下院の指示で作成したもの。英国政府は今年2月に「エネルギー白書」を公表したが、同委では政府がその準備段階において、低炭素あるいは非炭素エネルギー源の研究開発にどの程度予算を支出していたか調査。支援を受けるべき低炭素エネルギー源を同委として独自に特定するとともに、それらのRD&D進捗状況や技術基盤などについても評価している。

 将来の英国を非炭素燃料経済に導くために関係省庁など複数の財政機関が支出した額について同委はまず、「再生可能エネルギーの開発目標値達成には程遠く、焦点の曖昧なRD&D活動に投資されている」と指摘。おびただしい数の財政支援機関が存在するにも拘わらず、その努力は分散し、産業界や学界も混乱状態にあると評価している。

 同委は結論として、エネルギー政策のための政府構造は不適切であり、再生可能エネの開発目標達成には省庁レベルの強力な指導力を有する新たな責任当局が必要だと勧告。風力、波力発電のほかに原子力および核融合の開発に焦点を絞るべきだと強調している。

 同委によれば、再生可能エネの開発に義務事項を設けると市場取り引きのレベルに近い技術にのみ開発意欲が傾けられる。気候変動税の徴収は乱暴な措置であり、欧州内の排出権取り引き制度でCO2の排出量を抑えられるとする政府見解は見当違いだと批判した。

 このような現状分析を背景に、同委は化石燃料と非炭素燃料などを開発段階ごとに区別する革新的な税制の導入を提案。原子力については特に、主要な非炭素発電技術と位置付けるとともに、核融合その他の非炭素技術が商業規模で利用可能になるまでは英国のCO2排出量を出来るだけ抑えるために原子力を活用すべきだとしている。

 同委はまた、英国政府がエネルギー白書の中で「新規の原子炉を建設するには、別途国民の意見を聞き、新たな白書に盛り込まねばならない」とした点については「混乱を招くだけだ」と断言。直ちに積極的な対策を講じなければ原子力産業は凋落し続けることになると警告した。

 また、原子力オプション維持のために政府が唯一すべきことは、例え小規模でも新たな原子炉建設計画に原則的な許可を与えることだと指摘しており、将来に希望があるという明確なメッセージを発信することが重要だと訴えている。

 同委はさらに、年間で少なくとも1000万ポンドの予算を充てて英国が第四世代原子炉フォーラムに積極的に参加していくよう勧告。BNFLが南アフリカのPBMR開発に関与している点に対しても賞賛の意を表すとともに、今後の進展を興味深く見守っていくとの見解を示した。


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