[原子力産業新聞] 2003年5月8日 第2184号 <3面>

[欧州委員会] 脱原子力政策を批判 L・デパラシオEC副委員長

 欧州委員会(EC)で運輸エネルギー担当委員を務めるL・デパラシオ副委員長は先月、欧州連合(EU)域内のいくつかの加盟国による脱原子力政策について「京都議定書に提示された温室効果ガス削減目標を満たしていく上で障害になる」との見解を示した。

 同副委員長はこの日、ブリュッセルで開かれていた世界エネルギー会議(WEC)のセミナーで講演。まず、欧州のエネルギー政策における課題について述べ、域内で最大の懸案事項は輸入石油とガスへの依存が高まっている点だと指摘した。近年、欧州のエネ輸入率は五〇%だが、今後20年間でこの数値は70%になり、使用する石油とガスの9割は域外からの輸入になると警告。同委員によると現在のエネルギー供給システムの中で欧州のエネ消費量は年平均2%で増加しており、ガス火力の需要はほかのエネ源に比べて急速に拡大中。これに伴い温室効果ガスの排出量が増えているにも拘わらず、省エネ対策や再生可能エネの開発が遅々として進んでいないという事実を考え合わせると、欧州のいくつかの国で採られている脱原子力政策は京都議定書の目標値を満たすという点で一層困難を伴うことになるとの懸念を表明している。

 同委員は、欧州で単一のエネルギー市場が生まれたことからも域内各国の協調は重要だと強調しており、共通の目標として次のような提案が議論されつつあると指摘した。すなわち、再生可能エネによる発電シェアを2010年までに22%に拡大するほか、輸送用燃料にバイオ燃料や水素燃料を導入。石油とガスの備蓄についても、世界のエネ市場における市場操作に左右されないよう枠組みを改善する。原子力に関しては欧州理事会が発電所の廃止措置や放射性廃棄物の処理・管理で域内共通の方策を創設する指令案を検討中である点を強調。同委員の見解として、「原子力オプションはこれを望むすべての加盟国のために解放しておかねばならず、この事は京都議定書以降の観点からはなお一層重要」との認識を明らかにした。


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