[原子力産業新聞] 2003年5月8日 第2184号 <5面>

[東北大研究グループ] 新物質の超伝導起源の解明に成功

 東北大学大学院理学研究科の高橋隆教授らの研究グループは、新高温超伝導体、二ホウ化マグネシウム(MgB2)の超伝導起源の解明に世界で初めて成功し、今月一日付け英国科学誌「ネイチャー」に発表した。MgB2は、2年前に青山学院大の秋光純教授らによって発見され、日本発の新高温超伝導体として、基礎科学および産業応用の両面から大きな注目を集めている。MgB2は、金属化合物で最高の超伝導転移温度(絶対温度39度、セ氏零下234度)を持ち、17年前に発見された酸化物高温超伝導体に比べ、より高い加工性、より大きな電流を流せる優れた特性を持っている。しかし、その超伝導がどのような起源で起きているのかについては不明な点が多く、超伝導機構解明の研究が世界中で進められていた。

 今回、東北大学のグループは、高エネルギー紫外線をMgB2結晶に照射して超伝導電子を結晶外に取り出し、そのエネルギー状態を世界最高の分解能で精密に調べた。その結果、シグマ電子と呼ばれる、結晶内のホウ素原子面内を二次元的に運動する電子が高温超伝導の起源である事を見いだし、MgB2が「2バンド超伝導」と呼ばれる、他の金属超伝導体や酸化物超伝導体とは異なる新しい機構で超伝導を発現していることを明らかにした。

 文科省の振興調整費等の援助を受けた研究成果。


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