[原子力産業新聞] 2003年5月15日 第2185号 <1面>

[経済産業省] 逼迫する首都圏の電力需給 「対策本部」設置

 東京電力の原子力発電所17基のうち、16基が点検等によって停止、今夏の首都圏の電力需給ひっ迫が懸念されるなか、8日に経済産業省は、平沼赳夫経済産業相を本部長とする関東圏電力需給対策本部を設け、夏期に向けた電力需給対策を決めた。現在見込まれている供給能力は、2年前の需要ピーク時より数百万キロワット少なく、早ければ六月末にも供給力不足に陥る可能性があり、柏崎刈羽6号機に続く原子力発電所の早急な運転再開が望まれている(4面に詳報)。


 東京電力管内の電力需給については、火力発電の増出力や電力融通などによっておおむねピーク時に6000万キロワット分の供給力は確保される見通しだが、2001年の7月24日がピークとなって6430万キロワットを記録したことがあり、ピーク需要期は、梅雨明け直後、特に近年の状況を見ると7月初めにも到来する可能性があると、経済産業省では危機感を強めている。一方、供給力の見通しを踏まえると、東京電力の供給区域内では、早ければ6月30日の週からピーク時間帯に電力の需給ギャップが発生する可能性があるとしている。そのため、同省では、省エネの徹底を同省はもとより、国民、関係省庁、東京都など地方自治体、各企業に改めて呼びかけ、電力需給ギャップへの対応に全力をあげる方針。

 需要対策については東京電力に対して、需要の増大による供給力の不足を回避するため、需要家に対する個別の節電要請を行うとともに、ピークカットに対応した供給契約の拡大等を通じ、緊急時における需要の削減に向けて最大限努力するよう求めたほか、今年3月27日に省エネルギー・省資源対策推進会議が決定した「当面の省エネルギー対策の徹底実施について」の実施状況を踏まえ、特に節電対策について、引き続き国民各層及び産業界に周知徹底を図る考えだ。たとえば産業界には、夏休みを前倒しするよう協力を求め、工場等で特に電力消費量の大きい設備をピーク時以外に稼働させるよう求めるといった対応策を呼びかけている。

 東京電力でも八日に勝俣恒久社長が会見、不測のトラブルによる発電所の運転停止や、夏の高需要時に一度気温が上昇すると170万キロワットも需要増となるといったリスクなども考えあわせると、300万キロワット程度は予備供給力が必要との考えを明らかにした。そのため現在行っている原子力の点検や補修をしっかり実施し、安全性を最優先に立地地域からの信頼回復に取り組み、7月、8月には、ぜひとも八基から十基程度の原子力プラントの運転をお願いしたいと述べた。

 柏崎刈羽6号機以外には、現時点で運転再開のメドはたっていない状況。同7号機が来月4日、5日に格納容器の漏洩率検査を実施する準備に入っているが、他プラントは点検や定検のため停止中。


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