[原子力産業新聞] 2003年5月15日 第2185号 <2面>

[原子力安全委員会] 安全目標で検討実施

 原子力安全委員会は12日、安全目標専門部会(部会長=近藤駿介・東大院教授)を開き、安全目標の策定に関する検討を行った。安全目標は米英等で導入されており、こうした先行例も参考にしながら、確率論的安全評価手法(PSA)の知見を導入して安全目標を策定し、一層効果的な原子力の安全確保をはかることがねらい。

 この日、これまでの検討状況を踏まえた安全目標に関する考え方を整理した資料をもとに、安全目標のあり方や今後の論点をめぐる議論が行われた。

 同資料には、安全目標の導入のメリットとして、国の安全規制活動に一層合理的で整合性のある活動体系の実現に寄与するとともに、一層の透明性、予見性を与える等の点があげられ、国の安全規制の根拠を明確に示す根拠ともなる、としている。安全目標の策定方針に関しては、その対象となる原子力利用活動を、公衆に対する危険性の存在を否定できない広汎な原子力利用活動、としている。

 また定性的な安全目標については原子力利用活動に伴う事故によって、公衆の日常生活に伴う健康リスクを有意に増加させない水準に抑制されるべきとの考え方が示された。定性的な目標を満足するための量的な判断水準を示した定量的な安全目標についても、今回の資料に、公衆の個人の日常生活に伴う健康リスクの千分の一程度に抑制されるべきとする案と、原子力施設の操業に伴う事故での放射線被ばくによる公衆の個人の健康リスクの年百万分の一程度に抑制されるべきとする案の二つが示された。あわせて定量的な安全目標がしきい値としてでなく、定性的な安全目標が求めるリスク抑制が行われていると判断できる量的水準を示すものとする考え方が示されている。

 また今後の安全目標策定に関する論点と課題も整理され、現時点で目標案には、平常時の発電用原子炉施設における公衆の被ばくリスクを安全目標の対象外としたこと、またテロなどの人為的なリスクを対象外としたことなどが今後の検討の論点としてあげられている。

 専門部会は今後、こうした定性的・定量的な安全目標の表現や、策定上の論点、課題をめぐってさらに意見を交わし、6月末にも目標の案を中間とりまとめの形でまとめ、意見公募を行う予定。同時に、今後の安全目標の適用にむけて必要な課題の抽出やその解決のための検討等を行うため、試行に係る方針を検討し、試行及びその評価を実施していくことにしている。


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