[原子力産業新聞] 2003年5月15日 第2185号 <3面>

[米・DOE情報局] 国際エネ需給で長期見通し

 米エネルギー省(DOE)内にある独立の統計分析機関であるエネルギー情報局(EIA)は1日、「国際エネルギー見通し(IEO)2003年版」の中でアジア地域を中心にエネルギー消費が拡大していくとの長期予測を明らかにするとともに、原子力については「世界の総発電量に対するシェアは低下するものの、アジア諸国で新規原子炉の建設が続くなど今後も重要な電源であることは変わりない」との見解を表明した。

 最新のIEOでEIAはまず、今後25年間に世界のエネルギー消費量は標準ケースで五八%増加するが、その大半は中国やインド、韓国を中心とする途上国での伸びだと指摘。昨年版のIEOで99〜2020年に年平均3.8%と予想していた中南米諸国のエネ消費伸び率については、2003年版では実質的に2.4%に下方修正している。具体的な理由としてEIAは、ベネズエラの社会不安やアルゼンチンの経済危機、コロンビア政府による反政府勢力鎮圧活動の復活など、これら諸国が直面する政治的、経済的な課題を挙げている。

 原子力については、2001年実績で世界の電力総供給量の19%を占めた点に言及。IEO2003年版の標準ケースによると、近年多くの国で見られる原子力離れの傾向が今後も続くと予想されることから、2025年までに原子力シェアは12%まで低下していくとの見方を示している。しかしその一方で、「それでも原子力が重要な電源であるという事実に変りはない」とEIAは強調。既存炉の運転寿命延長や高稼働率の維持、出力増強などが閉鎖による設備容量の低下を相殺するほか、中国やインド、日本、韓国など特にアジア地域で2001年〜25年までの間に新たに4500万キロワット分の新規設備が見込まれる点を指摘している。

 このほかEIAは、世界経済は昨年から回復傾向に入っているため、標準ケースで2001年に7700万バレル/日だった世界の石油消費量は25年までに1億1900万バレル/日になるとの見方を示した。天然ガスに至っては今年は標準ケースで消費量が倍になるなど、今後もエネ源の中では最も早いペースで消費が拡大していくと予想している。これに伴う世界のCO2排出量については2001年から25年までの間に59%増加するものの、国内総生産(GDP)一ドル当たりの排出量は今後20年間でかなり改善されるとの認識を表明している。再生可能エネに関しては同じ期間に消費量が56%増加し、世界全体のエネ消費量に対して8%のシェアを維持していくと予測。化石燃料が低価格なため競争力を持ち難く、シェアの伸びは見込めないとの見方を明らかにした。


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