[原子力産業新聞] 2003年5月15日 第2185号 <4面>

[経済産業省、東京電力] 今夏の首都圏需給見通し

 一面所報の通り、東京電力の原子力発電所の停止によって、今夏、首都圏の電力需給不安が問題となっている。8日、経済産業省は首都圏の対策本部を設けて省エネ等の徹底を呼びかけた。東京電力では、このほど発電再開した柏崎刈羽6号機を含めて原子力プラント8基から10基程度の運転再開が必要としているが、同6号機以外、運転再開への見通しは立っていない状況だ。今号で経済省の対策など中心に、今夏需給見通しと、需給ギャップへの対策を紹介する。


6月末にも電力不足 火力等の増出力で6000万キロワット分は確保

1・夏期の最大需要電力の実績

 @東京電力管内の電力需要は、7月から8月にかけて冷房用需要を中心としてピーク時を迎えることとなり、過去最大の電力需要は6430万キロワット(※1)である。(2001年7月24日午後2時、当日の東京最高気温38.1℃)。

(※1)電力需要が6000万キロワットを越えたのは、2001年には8日、合計29時間、2002年には6日、合計25時間

 Aまた、7月の第1週に6010万キロワットを記録したこともある。(2001年7月5日午後3時、当日の東京最高気温34.9℃)

2・供給力の見込み

 @東京電力は、休止中の火力発電所を補修・点検することを始めとして、自社原子力を除く火力、水力等による供給力の増大を図ってきており、現在のところ、自社原子力以外で7月、8月において、概ね5500万キロワット(※2)の供給力を確保している。これに、昨日起動した柏崎刈羽6号機(135.6万キロワット)を加えれば、供給力は概ね5600万キロワットとなる。

(※2)5500万キロワットの内訳

  • 自社電源約4000万キロワット(うち、水力が約700万キロワット、火力が約3300万キロワット)
  • 他社受電約1500万キロワット

 Aさらに、東京電力は、あらゆる手段を講じて試運転中の火力発電所の電力の活用、他電力からの追加的な緊急融通等の追加供給力対策(※3)の準備を進めており、これが確実に達成されれば、7月、8月において、さらに概ね400万キロワットの供給力が確保し得る見込みである。

(※3)追加対策の主な例

  • 試運転電力の活用(約190万キロワット)
  • 追加的な緊急融通(90万キロワット)
  • 自家発電からの買い上げ(約40万キロワット)
  • 火力の増出力運転(約50万キロワット)等

 B以上のとおり、7月から8月にかけての電力需要ピーク時期において、概ね6000万キロワットを確保し得る見込みである。ただし、この数字は自社の発電設備や他社受電に係る発電設備がトラブル等無く安定的に運転した場合の数字であることに留意する必要がある。

3・夏期における電力需給

 @過去の実績を踏まえると、節電への対応が遅れ、酷暑となったときには、6450万キロワットの需要が想定される。他方、追加的な供給力対策が確実に達成されたとしても、東京電力の供給力は、前記のとおり、現時点では概ね6000万キロワットが見込めるにすぎない。

 A加えて、気温上昇に伴う需要増の可能性、発電設備の運転停止リスク、試運転電力の供給力としての不確実性等(※4)を考慮すると、需給ギャップはさらに拡大する可能性もある。

(※4)

  • 例えば東京電力の火力の最大ユニットは100万キロワット
  • 東京電力管内では気温が1℃上昇すると170万キロワットの最大需要電力が増加
  • 試運転電力は補修や点検のため、確実な供給力としては期待できない等

 Bなお、需給ギャップは6月30日の週にも生じる可能性がある。


省エネ徹底など呼びかけ 需給ギャップ解消に全力

 経済産業省は、8日に平沼赳夫経済産業相を本部長とする関東圏電力需給対策本部を設けて平成15年夏期に向けた電力需給対策を次の通り決定した。

東京電力による原子炉の自主点検に係る不正記録等により、昨日起動した柏崎刈羽原子力発電所6号機以外の同社の原子炉16基(設備容量計・1595万キロワット)が停止し、その分の供給力が減少している。一方、夏期に向けて電力需要は増大し、平成13年には7月24日がピークとなり、6430万キロワットを記録している。ピーク需要期は、梅雨明け直後、特に近年の状況を見ると7月初めにも到来する可能性がある。一方、供給力の見通しを踏まえると、東京電力の供給区域内においては、早ければ6月30日の週からピーク時間帯に電力の需給ギャップが発生する可能性がある。このため、その時期に向けて、東京電力に対して需給両面の対策を求めることとし、併せて、関係省庁や地方公共団体の協力を得て、国民各層及び産業界に対し、広く節電を呼びかけることとする。

 T・供給力対策について

東京電力に対して、以下の対策を講じるよう求める。

 (1)現在停止中の原子炉について、十全な点検・補修を行う等により、安全の確保に万全を期すること。

 (2) 既に供給力として報告のあった電源については、確実に確保すべく万全を期すこと。また、検討・調整中の供給力として報告のあったものについては、予定どおり確保できるよう最大限努力するとともに、更なる追加的供給力対策についても引き続き検討すること。

 なお、東北電力に対しても、供給構造上、東京電力と密接な関係にあることから、前記に準じた対応を求める。

 U・需要対策について

 1、東京電力に対して、需要の増大による供給力の不足を回避するため、需要家に対する個別の節電要請を行うとともに、ピークカットに対応した供給契約の拡大等を通じ、緊急時における需要の削減に向けて最大限努力するよう求める。

 2、前記の東京電力による需要対策を補完し、緊急時に備え節電に対して全力で取り組みうるよう、以下の対策を講じる。(中略)

 (1)今年3月27日に省エネルギー・省資源対策推進会議が決定した「当面の省エネルギー対策の徹底実施について」の実施状況をフォローし、その結果も踏まえ、特に節電対策について、引き続き国民各層及び産業界に周知徹底を図る。

 (2)国民各層及び産業界に対し、ピークカット対策について検討するようお願いするとともに、準備のために時間を要する節電対策についても、それぞれの創意工夫により、積極的に検討するようお願いする。

検討に当たっては、例えば、

 @夏休み時期の7月への前倒し、あるいは分散

 A使用電力の大きい機器や設備の作動を、ピーク時間帯外へずらすことを可能とする操業スケジュールの調整といった案も参考にするようお願いする。

 (3) 経済産業省庁舎においては、こうした対策に加え、以下の対策を行う。

 @昼休みは、業務上特に必要な箇所を除き、全館一斉に消灯し、昼休み以外の時間帯は、こまめに消灯するとともに、特に廊下、エントランスホール等の電灯については四分の三程度の照明を消すこと。

 A昼休みにおいては、エレベーターの運転台数を半分とする。昼休み以外の時間帯においては、エレベーターの運転台数を40%以上減らし、近くの階への昇降は階段を用いること(2アップ・3ダウン等)。

 Bコピーの量を必要最小限にする等、OA機器の節電に努めること。

 C情報システムの移行作業については、ピーク需要を回避して実施することを検討すること。

 D省内一斉節電運動を行い、その節電効果を測定すること。

 E各部局に節電対策実施責任者を決め、節電対策の実施を徹底すること。

 他の省庁及び政府関係機関並びに関東圏の地方公共団体に対しても、協力を要請する。(後略)


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