[原子力産業新聞] 2003年5月29日 第2187号 <2面>

[産業構造審議会・地球環境小委] CO2の総量規制困難と見解

 経済産業相の諮問機関である産業構造審議会の環境部会・地球環境小委員会(委員長=茅陽一・東大名誉教授)は26日、京都議定書で盛り込まれた国別の総量規制的な考え方を同議定書の第一約束期間(2008−12年)以降の温暖化対策に適用されることは、現状を踏まえて難しく、複眼的な視点で国際的な枠組みを検討する必要があるとの考え方を示した中間とりまとめを行い、28日から意見公募を始めた。

 京都議定書は先進国中心に国別の総量規制という形をとっているが、途上国、特に二酸化炭素の排出量が今後かなり伸びていくとみられるアジア地域の途上国がその規制枠には入っていない。途上国を規制枠外とした事で米国が離脱を表明するなど、議定書の通り実効性ある成果が得られるかどうかが問われている。

 今回、小委では、そうした現状認識をふまえて、「国別キャップの設定だけに頼る場合、実効的で意味のある取り組みに結びつくかどうか不確実性が大きい」と指摘。GDP(国内総生産)当たり温室効果ガス排出量など、総量規制以外の複眼的視点で気候変動の国際的な枠組みを検討することが重要との考え方を打ち出した。二酸化炭素排出増加が著しい中国・インドなどの途上国や、米国も参加した枠組みを再構築していくことが重要との認識のもと、国際的枠組みに参加を促すインセンティブ、参加しなかった場合のディスインセンティブも考え、主要な排出国の離脱を抑制できる仕掛けを枠組みに盛り込む必要があることを強調している。

 また、環境面での大きな役割を果たしている原子力について、「正面からとらえられるべき」との認識を示している。

 経済産業省が21日まとめた前年度のエネルギー需給実績によるとエネルギー起源CO2排出量は1兆1306億トン、対前年度比2.7%の減少(90年度比では6.3%増)だった。90年比で6%削減が目標となっている日本は、目標達成が厳しい状況にある。


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