[原子力産業新聞] 2003年6月12日 第2189号 <2面>

[原産] ロシア北方艦隊 原潜解体の現状(下)

 先週号に引き続き、日本原子力産業会議が5月11〜18日、ロシアの北方艦隊関連地域とモスクワ市へ派遣した調査団(団長=植松邦彦常任相談役)で事務局を勤めた原産の横山宣彦調査役に、ロシアの原潜解体の現状等を紹介してもらう。

 原潜解体処理の主な流れは、@使用済み燃料の取り出し、一時貯蔵(追ってウラルのマヤク工場への鉄道輸送)A低レベル固体液体廃棄物の貯蔵・処理B原子炉モジュール(原子炉区画とその前後区画を一体としたもの)の切り出しと海上貯蔵C鉄非鉄スクラップの回収――であるが、関連インフラは、米国、ノルウェーなどの支援によりほぼ整備され、解体処理作業自体に対する資金的手当てが最大のネックのようであった。

 調査団は、モスクワで原子力省アンチーポフ担当次官、極東ズベズダ工場の工場長等の関係者と会談した。その席上、極東における原潜解体上の問題点は、現在海上に貯蔵されている原子炉モジュールから原子炉区画を切り出し陸上に貯蔵する問題、カムチャツカにおける原潜解体方法、解体作業の資金手当て、さらには多目的原潜に特有の技術的問題などにあることが明らかとなった。極東のウラジオストックにあるズベズダ工場でも、セベロドビンスクとほぼ同様のインフラが整備されている。極東には事故原潜が三隻あるが、日ロ協力の近々の課題とはされていないようだ。

 ロシア北方では、米ロの二国間協力や、ノルウェーを含めた三国間(AMEC)協力に加え、ドイツ、英国、フィンランド、スウェーデン、イタリアなども支援に参加、さらにはEU、IAEA、OECDなども協力している。しかし極東では、米国の相互脅威削減計画(CTR)を除けば、資金提供は日本のみであり、日本への期待度は大きい。

 現在、日ロ政府間で、多目的原潜一隻を試験的に解体するプロジェクトがまとまりつつあるが、このケースでは資金提供のみで、日本の民間企業からの参加はない。今後民間としては、どのように極東地区での原潜解体に協力できるのか、ハード、ソフトの供給以外にも、プロジェクト構築上のノウハウなども含め、多面的に検討する必要がある。クルチャトフ研究所が提案している安全管理センター設置もその一例である。さらに問題点を具体化するため、極東艦隊の実情も視察する必要があり、ロシア側と協議中である。

 帰国直後の5月21日、ストックホルムで10か国三国際機関が参加し、ロシア原子力関連環境対策多国間協力プログラム(MNEPR)が調印され、原潜解体などのプロジェクトに対する免税措置、原子力事故の際の免責などが規定されることになった(本紙6月5日号3面参照)。長年の懸案が一応解決したため、各種プロジェクトの進捗が期待される。この協定は希望国に解放されており、日本もこれに今後参加することは可能である。(終)


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