[原子力産業新聞] 2003年7月3日 第2192号 <3面>

[IAEA] ウィーンで国際会議

 国際原子力機関(IAEA)は6月23〜26日、ウィーンのIAEA本部で「核燃料サイクルと原子力発電での革新技術に関する国際会議」を開催(=写真、IAEA提供)、約200名が参加した。日本からは、藤家原子力委員長、齋藤原研理事長など十数名が参加。藤家原子力委員長は開会セッションで「将来に向けた革新的核燃料サイクル」と題した講演を行った。

 この会議は、IAEAに世界原子力協会(WNA)など4機関が協力して開かれたもので、「革新の必要性、展望と問題点」、「社会、経済、政治状況の変化」、「革新技術実用化への問題点」、「革新的原子力システムに関する国際計画」など7つのセッションからなる。

 出張中のエルバラダイ事務局長の挨拶を代読したムロゴフ事務局次長は、原子力が環境に与える影響が最小の大規模電源だとしながらも、原子力発電は「現状維持で、その将来は不確か」と述べ、将来、原子力発電が拡大できるかどうかは、原子炉と核燃料サイクル技術に革新がもたらされるかどうかにもかかっていると述べた。

 技術革新を成功させるために必要な要件として、@先進国のみならず途上国を含めた国際的な展開A本質的な安全性、核不拡散抵抗性、廃棄物発生量低減など、社会が原子力に対して持つ懸念に応えうるシステムの開発B米国の主導するGEN―WとIAEAの国際革新型炉・燃料サイクル計画(INPRO)との連繋を含め、幅広い国際協力C経済性、投資家の信任、PA等に大きな影響を与える要素の再検討――等をあげた。

 この後、OECD・NEAのエチャバリ事務局長を議長とするパネルで、WNAのリッチ事務局長は、主要先進国の研究所・大学をインターネットで結んだ「世界原子力大学構想」を提唱、注目を集めた。また、「途上国における原子力発電計画拡張への展望」と題して講演したインド原子力委員会のカドカール委員長は、インドの急激な人口増とエネルギー消費増を背景にして、革新的な原子炉導入による原子力発電計画の拡張の必要性を力説した。

 藤家原子力委員長は、「将来に向けた革新的核燃料サイクル」の講演の中で、核燃料サイクルの重要性を強調、この開発段階として、@ウラン濃縮などフロントエンドの開発A軽水炉燃料の再処理、MOX利用Bリサイクル社会に適合する高速炉リサイクルの確立――との考え方を述べた。また、広く世界に「もんじゅ」での研究開発への参加を呼びかけ、世界全体の利益になる研究開発を進める必要性を訴えた。


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