[原子力産業新聞] 2003年7月10日 第2193号 <2面>

[サイクル機構] 常陽、「MK−V」で初臨界

 核燃料サイクル開発機構大洗工学センタ―の高速実験炉「常陽」は、2日14時、MK―V炉心での初臨界を達成した(=写真)。照射性能向上を目指して行ってきた改造工事が終了、6月30日に起動したもの。今後、10月末頃まで性能試験を実施、2004年度から本格運転の予定で、高速炉サイクル技術実用化に向けた燃料、材料等の照射試験や、外部の利用に用いられる。

 熱出力140MWのMK―V炉心は、MK―U炉心に比べ、炉心領域の高速中性子束を1.3倍にした。また、燃料取扱設備の自動化等により、燃料交換期間を約3分の1に短縮、さらに定期検査期間を約4分の3に短縮することにより、稼働率を1.5倍に向上、照射効率を現行の2倍に高めるとともに、照射スペ―スを2倍以上に拡大してFBR実用化に向けた燃料・材料開発の促進を図ることを目的としている。また、炉心内側と外側で異なるプルトニウム富化度により、炉心の二領域化を行った。

 2000年10月に始まった改造工事では、熱出力の増大に伴い、主中間熱交換器、主冷却機などの大型冷却系機器を交換・改造、また、炉心高さの短縮、炉心の拡大、制御棒2本の移設等を行った。炉心からの漏洩中性子による炉内ラックで冷却中の使用済燃料の発熱量を低減するため、最外周の反射体2層を炭化ホウ素を装填した遮蔽集合体に置き換えた。今回交換・改造した機器は、2001年9月から03年3月にかけ、単体及びプラント全体での試運転・機能確認を行い、6月30日に原子炉の運転を開始した。

 常陽は、最初の増殖炉心であるMK―T炉心(熱出力50/75MW)が1977年4月に初臨界、照射用のMK―U(熱出力100MW)炉心は1982年11月に初臨界している。MK―I炉心は、核燃料の増殖を効率よく行うために、炉心の周囲に劣化ウランからなるブランケット燃料を配置している。MK―U炉心は、燃料・材料の照射効率を向上させるため、炉心の中性子束レベルが高くなるように設計されており、炉心の体積を小さくするとともに燃料集合体の燃料要素本数を増やし、炉心外側のブランケット集合体を反射体に置き換えた。

 常陽MK―V炉心の臨界に際し、サイクル機構の都甲理事長は、地域の方々の理解と協力に深く感謝、「今後、仏国高速原型炉フェニックス炉と手を取り合って 高速炉サイクル技術の実用化に貢献したい」との談話を発表した。


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