[原子力産業新聞] 2003年8月7日 第2148号 <1面>

[原子力安全委専門部会] 安全目標で中間まとめ

 原子力安全委員会の安全目標専門部会(部会長=近藤駿介・東大院教授)は4日、「安全目標に関する調査審議状況の中間とりまとめ」を、原子力安全委員会に報告した。同専門部会は定量的目標案を、事故のさいの緊急死亡および平均ガン死亡リスクが、年あたり100万分の1以下としている。

 同部会は、2001年2月の初会合以来、18回の会合を重ね、東京と京都における一般市民とのパネル討論会を経て、審議の結果を取りまとめた。「安全目標」の意味について、国の安全規制活動が原子力事業者に対してどの程度発生確率の低い危険性まで管理を求めるのかという、危険性の抑制の程度を定量的に明らかにするものと定義、安全目標策定の利点について、@原子力安全規制の活動に透明性・予見性を与え、効果的・効率的にするA指針・基準策定などで国と国民の意見交換が効果的・効率的になるB原子力事業者が、リスク管理活動をより効果的・効率的に実施できる――を挙げている。

 安全目標の対象としては、公衆に放射線被ばくによる影響を及ぼす可能性のある原子力利用活動と広く定義、安全目標の構成は、原子力事業者が達成すべきリスクの抑制水準を示す定性的目標と、その具体的水準を示す定量的目標から成るとしている。さらに定量的目標は、客観的であり、様々な活動に伴うリスクに共通することから、公衆の個人死亡リスクを用いる。

 定量的安全目標の指標として、第一の指標は最も高いリスクを受ける敷地境界付近の公衆のグループの平均急性死亡リスクとし、第二の指標は敷地境界からある距離の範囲の公衆の平均がん死亡リスクとしている。また、原子力施設の種類ごとに、施設に固有の重大事象を選び、事故・事象の発生確率を性能目標として策定する。

 具体的な定量的目標案としては、原子力事故での放射線被ばくによる、施設の敷地境界付近での平均急性死亡リスクが、年あたり100万分の1程度を越えないようにし、また施設からある距離の個人の平均がん死亡リスクも、年あたり100万分の1程度を超えないとしている。

 さらに、原子力施設の性能目標として、@原子炉の重大炉心損傷発生確率や大量の放射性物質放散確率A核燃料サイクル施設運転時にある規模の放射線放射や放射性物質放散の確率――を示すとしている。


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