[原子力産業新聞] 2003年8月21日 第2198号 <2面> |
[環境科技研] 自然放射線の20倍では寿命に影響なし環境科学技術研究所(大桃洋一郎理事長)は、このほど、低線量放射線がマウスの寿命に与える影響に関する調査を発表、自然放射線の20倍程度の照射では、寿命に影響が見られないとの結果を公表した。 同研究所は1995年から、青森県の受託業務として、4000匹の特定の病原体をもたない(SPF)マウスを用いて、実験を開始。生後8週齢の2000匹のオスと、2000匹のメスのマウスを4つのグループ(1つの非照射対照群と、3つの照射群)に分けた。照射群については、1日当たり20ミリグレイ(mGy、自然外部放射線被ばくの約8000倍)、1mGy(同400倍)、0.05mGy(同20倍)の線量率で、セシウム―137のガンマ線を約400日間(1日22時間)、連続照射した。 この結果、自然放射線の20倍程度の0.05mGy照射群(集積線量20mGy)では、オス・メスともに、寿命に統計的に有意な影響は認められなかった。同400倍の1mGy/日照射群(集積線量400mGy)では、オスで寿命に影響は認められなかったが、メスでは、約20日の寿命短縮が認められた。同8000倍の20mGy/日照射群(集積線量8000mGy)では、オス、メスともに、100日以上の寿命短縮が認められた。 未照射マウスの寿命は、オスが913日、メスが861日。同研究所では、ガンの発生時期が早まっていることが寿命短縮の原因と見ているが、1mGy/日でなぜメスにだけ寿命短縮が見られるかなど、病理学的検査を今年一杯かけて行う予定。 この実験は、十分な実験計画と多数の実験動物を使用し、これまで世界中で行われた放射線影響研究の中で最も低い線量・線量率の影響を直接実証した世界初の研究であり、厳しい管理条件下(SPF)で、放射線の影響だけに的を絞ったことも、世界初の実験という。同研究所では、今回の結果は、「ICRPの考え方や我が国の放射線防護体系を支持するもの」としている。 |