[原子力産業新聞] 2003年8月28日 第2199号 <2面> |
[原研] 水素の連続発生に成功日本原子力研究所大洗研究所は、21日、ヨウ素と硫黄を用いたISプロセスによる水の高温熱分解で、毎時35リットルの水素を連続的に発生させることに世界で初めて成功したと発表した。ISプロセスは、水をヨウ素(I)や硫黄(S)の化合物とブンゼン反応させ、生成物であるヨウ化水素と硫酸の熱分解反応によって、水素と酸素を製造するもの。今回の実験では熱源として電気ヒーターを使用したが、化学反応には約900度の高温で熱分解する行程が必要なため、将来は高温ガス炉の利用が可能とみている。 ISプロセスによる水素製造では、ブンゼン反応、ヨウ化水素分解反応および硫酸分解反応の3つの化学反応を同時に起こす必要があるが(=図参照)、3つの化学反応を安定的に制御するのは困難だった。しかし、今回、日本原子力研究所が考案した制御法で試験を実施した結果、水素と酸素を6時間半にわたり安定的に発生させることができた。今後、さらに長時間の安定運転試験等を経て、2005年度からは大規模パイロット試験の実施を計画している。 一方、原子炉へ水素製造施設を安全に接続する技術の開発・実証のため、大洗研究所では高温工学試験研究炉(HTTR)水素製造システムの研究開発を進めている。これでは、高温ヘリウムガスの供給により、メタンの水蒸気改質法で水素を製造する。このシステムにより、早期に世界初のHTTRを用いた水素製造実証試験を行うとともに、原子炉と水素製造施設を安定運転するための制御技術、原子炉からの熱を直接利用した化学反応技術等の、ISプロセスに適用できる汎用性の高い技術の確立・実証を行う。HTTRと水素製造システムの接続は2008年頃を予定している。 地球温暖化対策として、クリーンな水素社会の実現が展望されるなか、その製造過程で二酸化炭素を排出しないISプロセスによる水素製造は、高温ガス炉の多目的利用と併せて、世界的にも注目を集めている。 |