[原子力産業新聞] 2003年8月28日 第2199号 <3面>

[シリーズ] ロシアの鉄道輸送の現状(上)

 ロシアは広大な国土に30基の運転中の原子力発電所を持ち核燃料の輸送が頻繁に行われる。また、ラジオアイソトープや原潜用燃料の輸送も多い。これらの輸送ニーズを支えているのが、コンテナによる鉄道輸送である。本号と次号では、ロシア・ノーボスチ通信社のタチヤナ・シニーツィナ評論員が取材した、「核物質輸送列車が行く」を紹介する。

 核物質を輸送する列車(=写真)は、見たところ普通の貨物列車である。「だからこそ目立たず、人々を怖がらせないんだ!」と原子力関係者は言う。ただ、どの車両にも放射能危険マーク(黄色の楕円形を地にした黒い三角形)がついている。このような特別貨物列車はすべての核大国の避けられないお荷物で、生活の現実である。核物質の輸送は自動車でも行われているが、ロシアでは規模から言って自動車は鉄道と比較にならない。

 使用済みと未使用の核燃料、さまざまな放射性物質、同位体製品などの危険貨物を積載した列車が毎日最低8本、ロシア鉄道省の列車運行表に載っている。

 毎日A地点からB地点へ「核列車」が2本ずつ運行するとする。それぞれの列車は7〜8車両編成である。これは年間では最大730本の「核列車」、約6000台のコンテナ車が鉄道を通ることを意味する。各コンテナの重量は40トンから80トンまで。これは大変な数字である。

 記者が取材したロシア原子力省環境安全国際センターのエドゥアルド・アブドーニン次長は次のように語った。「この数字を見て、どうか恐怖に駆られないでもらいたい。『核列車』の運行は全コースにわたって鉄道関係者だけでなく、われわれの専門家たちの常時監視のもとに行われている。ロシアでは放射性貨物の運搬に使用するコンテナに対して、非常に高い要求を出している」。アブドーニン次長はコンテナの強度試験のやり方について説明してくれた。コンテナの構造は、堅牢な基礎の上に据え付けられた金属製尖軸の上に9メートルの高さから落下しても無傷でなければならない。その次のテストではコンテナにビチューム、ガソリンをかけ、点火する――。コンテナは高温にも耐えなければならない。また、たとえばテロ攻撃の危険に備えるために、コンテナは各種兵器による攻撃のテストも受ける。信頼性を確認する特別の証明書をもらったあと、このような「核車両」は初めて使用に供される。鉄道関係者のほうも、非常に大きな荷重を受ける線路の状態を絶えずチェックして、特別貨物列車に安全運行を確保している。(続く)


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