[原子力産業新聞] 2003年9月4日 第2200号 <2面> |
[原子力安全委] 原子力安全白書を公表原子力安全委員会は8月29日、2002年度原子力安全白書を閣議に報告、公表した。今年度の白書では、東京電力の不正事件と「もんじゅ」判決の2件を特集として扱ったのが大きな特徴。 東電事件については、「何が起きたのか。政府はどのように対応したか」の章を立て、シュラウドのひび割れ、再循環系配管のひび割れ、格納容器漏洩率検査の不正操作について、事実関係、当該機器の安全上の位置づけ、ひび割れや不正の状況等を解説。「信頼回復のために原子力安全委員会及び政府が行ったこと」の章では、同委員会が昨年10月、発足以来初めて内閣総理大臣を通じて経済産業大臣に「原子力安全の信頼の回復に関する勧告」を行い、プロジェクトチームを設置、政府も定期事業者検査の法制化、設備の健全性評価の義務づけ、罰則の強化、安全委員会機能の強化などを行ったことを挙げている。 一方、原子力発電所の運転段階での規制の重要性が増してきたことから、白書は、規制改善に向けた新たな取り組みとして、確率論的安全評価(PSA)を取り入れたリスク情報に基づく「リスク・インフォームド型規制」導入を検討するとした。これは、米国ではすでに実施され、プラントの安全運転実績指標(PI)と併せ、「リスク情報を取り入れた運転実績に基づく規制」として、米原子力規制委員会(NRC)が2000年から実施、効果を上げている。白書では、リスク情報に基づく規制が「我が国においても運転段階での規制にのみならず、審査指針類にも適切に取り入れられていくことが必要」としている。 今年度の白書のもう一つの特集である、今年1月27日に名古屋高裁金沢支部が出した「もんじゅ」設置許可の無効判決について、「高裁判決の論理展開については、科学技術的観点から疑問が多々ある」とし、安全委員会は3月26日に「判決に係わる原子力安全の技術的論点」を決定・公表。白書では、判決で安全審査に過誤があったとされた@二次冷却材漏洩事故の評価A蒸気発生器伝熱管破損事故の評価B炉心崩壊事故の評価――について、それぞれ技術的観点から反論している。 |