[原子力産業新聞] 2003年9月4日 第2200号 <3面>

[シリーズ] 「核物質輸送列車が行く」ロシアの鉄道輸送の現状(下)

 先週号に引き続き、ロシア・ノーボスチ通信社のタチヤナ・シニーツィナ評論員による、ロシアにおける放射性物質列車輸送のルポ「核物質輸送列車が行く」を紹介する。

 「核列車」は厳密に定められたルートを運行している。列車の任務は第一に原子力部門の生産施設と企業(稼動中の原子力発電所、原子力研究センター、工場)を連絡することである。

 第二に、原子力省が「サービス」している各種の施設、たとえばウランを採掘している採鉱場や鉱山、あるいは北洋艦隊や太平洋艦隊の海軍基地と相互に結合することである。退役原潜の原子炉から取り出した核燃料をバレンツ海、白海沿岸の保管所から引き取るのも、「核列車」の仕事だ。この燃料は再処理が必要で、その作業は南ウラルにある国内唯一の専門工場「マヤーク」で行われる。したがって、北西地域(または極東地域)から放射性物質を「マヤーク」まで輸送するのも、「核列車」の任務に含まれている。

 特別貨物列車はまた、原子力発電所(国内と外国)の原子炉や、現役の原潜、原子力船で使用するための準備ができた新しい核燃料の輸送も行っている。新鮮な核燃料とはどんな姿をしているのか?これはかなり高価で複雑な金属製機械構造体で、100本を超す細い管で構成されている。管には解熱剤の錠剤ほどの小さな酸化ウランの粒が入れられている。この構造体には核反応を制御する制御棒が挿入される。これらはすべてコンテナ車に積み込む前に挿入する。

 「核列車」用のコンテナ車はサンクトペテルブルグ近郊のイジョルスキー工場で製造される。これらのコンテナ車は「核輸送」を行う企業に配属されている。列車には必ず2〜3両の護衛車が連結され、専門家たちと武装警護隊が乗務する。この仕事に任じられた者は全員、各便の前日の通常の健康診査のほか、必ず精神生理学テストも受ける。

 「核列車」は事実上、無停車で運行される。貨物は所定の安全規格に基づき現代的なテクノロジーで包装されているので、もちろん列車は途中でどんな放射線も出すことがない。ロシア原子力省は貨物移動のすべての情報が集中される特別の危機管理センターを設置している。

 それでもやはり環境汚染の何らかの危険があるのでは、という記者の問いに、ロシア原子力省環境安全国際センターのアブドーニン次長は答えた。「われわれの部門はつねに『危険の推定』の原則を堅持している。しかし、それへの回答は安全の確保だ。今のところ輸送中の事故は一件も起きていない。原子力利用が始まってから全期間を通じて」。


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