[原子力産業新聞] 2003年10月9日 第2205号 <1面>

[インタビュー] 野依・理研新理事長

 1日付で理化学研究所の新理事長に就任した野依良治氏は2日、理事長就任および独立行政法人への移行について記者会見し、所信を表明した。このなかで野依新理事長は、独立行政法人の趣旨を踏まえ、中期目標達成のために効率的・自立的な運営を推進するとともに、「見える理研」をはじめ、5つのイニシアチブを掲げ、理研の存在感を高めたいなど、抱負を語った。

 今回策定した中期目標の実施期間は、独立行政法人となった今月から2008年3月まで4年6か月。新たな研究領域の開拓、脳科学総合研究をはじめ8項目の社会要請に基づく重点的プロジェクト研究、大型放射光施設の供用促進、などを設定。2007年度には特許等出願数600件(昨年度の約1.2倍)等具体的な数値計画も設けている。

 新理事長・イニシアチブとして、@見える理研A科学技術史に輝き続ける理研B研究者がやる気を出せる理研C世の中の役に立つ理研D文化に貢献する理研──を掲げる。

 すでに80年以上の伝統をもつ理研だが、一般社会での存在感が大学などに比べ低いのでは、と指摘。研究者・所員にあらゆる機会をとらえて科学技術の重要性を社会に訴えるよう要請する。また、輝き続ける理研のためには研究の質を重視することが重要と強調。研究者がやる気を出すには自由な発想でオンリーワンの問題設定が必要とし、理事長の使命は、若い研究者にこうした研究環境を提供すること、という。

 世の中の役に立つ理研では、産業・社会との融合連携を一段と強化する一方で、大学や産業界では出来ないような文明社会を支える科学技術の研究も極めて重要と強調した。SPring−8、ゲノムなどは経済活動をベースとしないこうした科学技術であり、国が力を入れてサポートして欲しい、と要望した。


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