[原子力産業新聞] 2003年10月9日 第2205号 <3面>

[シリーズ] 日米再処理交渉の舞台裏(下)

 先週号に引き続き、1977年、当時のカーター米大統領が東海再処理工場の稼働に待ったをかけたことを発端とする日米再処理工場の舞台裏を、このほど秘密解除された米政府文書などからお伝えする。

【ワシントン9月23日共同】▽1977年7月12日付、マンスフィールド大使からバンス国務長官あて(カーター大統領も閲覧)機密公電

 核燃料再処理問題は極めて重要な段階に来た。不拡散への配慮とエネルギー需要の両方で釣り合いがとれる妥協案を見つけなければ、結果的に将来の日米関係に深刻な悪影響が出かねない。

 日本政府は再処理問題に死活的利益がかかっていると見ている。高官らは、日本が大変なエネルギー危機に見舞われており、原子力エネルギーを平和的にのみ利用すると誓っているのを米側は理解してくれないと訴えている。

 日本は西欧同盟諸国、特に西ドイツに対する米国の扱いと、自分たちへの扱いを比べるだろう。日本が核不拡散条約(NPT)でした約束を、米国は欧州諸国の約束のようには信頼していないのかと日本人は自問するだろう。(日米欧)三極という考え方の根幹にかかわる疑問だ。

(公電の余白にジミー・カーター大統領のJ・Cのイニシャルが付いた走り書き)

 サイ(バンス長官)へ。マンスフィールドには、わたしが個人的に妥協の決断を急ぐと伝えよ。急いで選択肢を示すように、彼から福田(赳夫首相)に伝えてもよい。

▽同日付、ブレジンスキー大統領補佐官(国家安全保障問題担当)から国務長官あての機密覚書

 大統領がけさ見た公電のコピーを添付した。技術調査団の報告ができ次第、選択肢を文書で提示するよう大統領は求めている。

 大統領は、これは極めて緊急だと感じている(この部分だけ手書き)。

▽同年7月15日付、大使から国務長官あて秘密公電

 7月15日に福田首相に初めて会って、要請のあったカーター大統領からの伝言を直接伝える機会を得た。

 大統領はこの(再処理工場)問題で自ら妥協の決断を早く打ち出すつもりだと、わたしから請け合うように求めてきたと首相に伝えた。大統領の伝言は厳秘としておくよう首相にお願いした。

 首相は、問題解決に向けて良い方向性を出せたと大統領からの伝言に感謝を表明した。

▽78年10月27日、ホワイトハウス閣議室での大統領、大使、国務長官、ブレジンスキー補佐官らの懇談速記録

大使 安全保障分野で(日本が)「ただ乗り」しているという言い分は正確ではない。日本の軍事支出は来年は世界7位だ。米軍住宅にまで、さらにカネをかけて住みやすくしようと検討している。政治的、軍事的、外交的に日米関係は最高の状態だ。唯一の問題は通商だ。政治的に日本(の力)は世界中に広がっている。もし(核)爆弾を欲しがらない国が1つだけあるとすれば、それは日本だ。

大統領 日本がさらに国際問題への関与を高めてくれるのを期待している。福田首相にはアジア、中東、欧州(の諸問題)でそうするよう促しておいた。日本がサウジアラビアと一緒にエジプトを支援してくれれば助かる。


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