[原子力産業新聞] 2003年11月13日 第2210号 <2面> |
[解説] バックエンドコスト一面所報のバックエンドコストの見積もりを見る際、前提条件をはっきり認識することが重要だ。主な前提条件は、@六ヶ所村再処理工場の運転期間を2006〜2046年の40年とし、その間に再処理される見込みの使用済み燃料3.2万トンを主対象に算定A海外からの返還廃棄物や再処理工場から発生するプルトニウムを用いたMOX燃料加工等も考慮B事業期間は2005年を起点とし2085年までの80年間C現在最新の技術的知見をもとに見積もりD事前に資金手当がなされる事業(高レベル廃棄物処分等)以外は支払利息を考慮E割引率(0〜3%)を用いて2005年に現在価値換算――など。中間貯蔵を除くと、2046年までに発生するすべての使用済み燃料(6.6万トン)を対象とはしていない点にも留意したい。 現在価値換算した原子力発電単価への影響で見ると、再処理が59%、高レベル廃棄物処分が12%、使用済み燃料中間貯蔵が9%、この3点で全体の80%を占める(=グラフ参照。総額でも同様)。再処理やMOXを含むプルトニウム・リサイクルコストは、総額で14兆6000億円超と、バックエンドコスト全体の79%に及ぶ。原子力を本質的に使いこなすにはプル・リサイクルが必須とはいえ、そのコストは決して小さくない。今後、このコスト負担を電力利用者に理解してもらうことが必要だ。また、エネルギー基本計画に盛り込まれた、バックエンドコストへの政府の「経済的措置」の中身も焦点となる。 見積総額の「18兆9100億円」は、現時点での技術を使った現在予測されるコストを積み上げたもので、現在価値換算されたものではない。近藤委員長が指摘する通り、経済的な意味は薄く、必要な経費のイメージを示したもの。一方、現在価値換算された原子力発電単価への影響(円/キロワット時)では、割引率がコストに大きな影響を与えることから、どのような割引率を用いるかが問題となる。 電事連は今回、0〜3%の割引率を用いて試算したが、今後80余年という超長期の事業スパンを考えると、現在のデフレ・超低金利を基準にした低い割引率が妥当か疑問が残る。巨額の公的債務や、人口の高齢化で低下する貯蓄率を考慮すれば、長期的にはむしろ、高インフレ・高金利社会を予期すべきではないか。 今回試算の原子力発電単価への影響(3%割引率時で0.99円)が、1999年に原子力部会が行った試算と1銭の単位まで同じというのも奇妙な話だ。事前に事業者から漏れ聞こえていた「総額21兆円超」が、蓋を開けると約18兆9100億円になっていたのも、この辺りの事情か。再処理工場が、2009〜2046年まで、年間800トンでフル稼働を続けるとの困難な仮定条件も合わせると、今回のバックエンド・コストは、予測できる最低ラインの数字を見積もったと受け止めるべきかもしれない。(喜多記者) |