[原子力産業新聞] 2003年11月13日 第2210号 <3面>

[韓国] 廃棄物シンポ

 原子力発電所18基・1570万キロワットを擁する韓国では、廃棄物処分場問題が最大の悩み――。韓国廃棄物学会と産業資源部は2、3日の両日、ソウル市内で「放射性廃棄物管理に関する国際シンポジウム」を開催した(=写真)。日本から土田浩・元六ヶ所村長を始め3名が参加したほか、仏ANDRA、スウェーデンSKB、OECD・NEAからも専門家約20名が参加、約500名の聴衆を集めた。また、処分場に近い全州でも、「放射性廃棄物の安全性に関するシンポジウム」が4日に開催された。

 韓国では、原子力発電所2基が建設中で、さらに8基を計画中。2011年にはドイツを抜き、世界第5位の原子力発電国となる。しかし、中低レベル廃棄物貯蔵所は2008年に飽和の見込みで、使用済み燃料貯蔵所は2016年頃、満杯になるものと予想されている。処分場立地の努力は、1986年以降、数回にわたって行われてきたが、すべて過激なデモを伴う環境団体と自治体の反対で頓挫してきた。

 こうしたなか、韓国の産業資源部(省)は、扶安郡の誘致を受け、2003年7月24日、全羅北道扶安(プアン)郡蝟島(ウィド)を放射性廃棄物処分・管理施設の適合サイトと発表。これを知った扶安郡住民の反対運動に火が付き、郡長が反対派から殴られ重態になるという事態まで起こった。

 シンポジウムでは、土田元村長が講演、村長として、核燃料サイクル事業開発の「凍結」、「安全協定締結」、「村民へ説得」など、経験に裏打ちされた説明を行った。同氏は、六ヶ所村では貧困からの脱却と地域活性化を求めながらも、汚染や風評被害を危惧しての反対があったが、「今日の繁栄と文明を享受できるのも、エネルギーを十分活用できるから」との認識から、原子力が抱える課題に取り組み、力を合わせて解決に向けて努力することが「自己責任」との論法で、村と一体になって村民の説得に取り組んだと、自らの経験を振り返った。

 このシンポには市民も参加、「今回の不手際は政府のリーダーシップの問題」、「地域の青写真を描くべき」、「全国民が感謝してはじめて、このプロジェクトは成功する」などの批判も出された。また扶安郡では、流言により不安感が強いとの紹介もあった。

 一方、誘致を決めた蝟島の住民からは「安全については問題ないと聞いている。蝟島から数十キロ離れている扶安郡で反対があるのは理解できない。その人々の了解を得る必要があるのか」等の意見も出された。

 国際シンポジウムに続き、全州(チョンジュ)で地域住民を対象とした「放射性廃棄物の安全性に関するシンポジウム」が開かれ、約250名が参加した。挨拶に立った全羅北道のカンヨンウク知事は「処分場の安全性に問題あれば積極的に反対していた。フランスのローブ処分場を見学したが、観光客も多く来ており、見学を通じ安全性を確信した」と述べ、安全性への信頼を表明した。


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