[原子力産業新聞] 2003年11月13日 第2210号 <3面>

[IAEA] イランが追加議定書加盟

 国際原子力機関(IAEA)は10日、イランのA・サレヒ大使から、同国が保障措置追加議定書を受け入れる旨の書簡を受け取ったと発表した。同書簡はまた、イラン政府が」10日付ですべてのウラン濃縮関連活動と再処理を停止する決定を伝え、ナタンツ・サイトの活動停止や濃縮用フィード物質を生産停止、濃縮関連機器の輸入停止等、通告した。イラン原子力庁の広報官も11日、同国がウラン濃縮の停止作業を開始したと述べた。IAEAは今後、保障措置協定や追加議定書にもとづき、イランのこれらの決定を検証する意向だ。

 イランのロウハニ最高安全保障委員会事務局長は、8日、ウィーンでIAEAのエルバラダイ事務局長と会談、イラン政府のこれらの決定を伝えた。会談後の記者会見でロウハニ氏は、「残されていた疑問をすべて明らかにした」と述べ、イランが核不拡散条約(NPT)加盟国として、原子力技術の平和利用を享受する権利があると主張、IAEAに技術協力を求めた。IAEAは現在、イランでブシャール原子力発電所運営能力向上を目指すプロジェクト等、13プロジェクトを実施中。

 20日からの理事会を前に、IAEAは10日、「イランでの保障措置実施に関する報告書(非公開)」を各理事国に配布、次期理事会ではイラン問題を焦点に議論が行われる。

 先月21日の英独仏3か国外相のイラン訪問により、急転直下、解決の方向に向かったイランの核開発問題だが、残された問題は少なくない。

 第1に、過去10年来のイランのNPT保障措置協定違反は明白であり、これを不問に付すべきかどうかだ。追加議定書加盟を免罪符に不問に付せば、国際的な核不拡散体制を危うくしかねない。

 第2は、そもそもイラン政府の平和利用へのコミットメントが信頼できるかどうかだ。今回の核問題を巡る危機でも、ともすればイランの瀬戸際戦術的な対応が目立つ。また信頼回復なしに、国際社会からの原子力技術協力は難しい。今後、追加議定書の署名・批准・実施が順調に行われるかが試金石だ。IAEAにとっても、イランで追加議定書にもとづく保障措置を有効に実施できるかどうか、真価を問われることになる。


Copyright (C) 2003 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.