[原子力産業新聞] 2003年11月13日 第2210号 <3面>

[産総研] 放射性2次廃棄物発生しない防護服システム開発

 産業技術総合研究所(産総研) スマートストラクチャー研究センターは6日、千代田メインテナンスと共同で、形状記憶合金を金属やプラスチック等の弾性体と複合化した「可逆的形状変化スマートストラクチャー」を着脱機構部に用いた、放射性2次廃棄物の生じない放射性物質防護服システム(=写真)を開発したと発表した。

 従来の放射性物質防護服を用いた放射性物質汚染環境下における作業では、防護服の上に重ね着した汚染コントロール衣服を作業の度に放射性廃棄物として処理する必要があり、@放射性2次廃棄物が大量に発生するA作業エリアへの入退室時には、付属室で補助員の手を借りて、放射性物質防護服を着脱装する作業を複数段階経る必要があり、作業効率の低下を招いている――という問題があった。

 今回発表されたシステムは、防護服着脱機構に可逆的形状変化スマートストラクチャーを適用。何度も使用できるようにしたもので、これにより使い捨ての汚染コントロール用衣服不要となったことから放射性二次廃棄物の発生がなくなり、また着脱時間が15分から5分へと大幅に短縮、入退室経路の複数確保などで作業能率の向上が可能となるとから、産総研では約3割のコスト低減が達成できると見込んでいる。

 なお産総研では、同システムは毒ガス等の化学防護服や微生物取扱環境用防護服、さらにはクリーンルームなどの他分野においても適用が可能であり、今後は「応用範囲の拡大を図っていく予定」としている。


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