[敦賀商工会議所] 提言書の概要
敦賀商工会議所は7日、西川一誠福井県知事に対し、「敦賀地域経済振興に関する提言」を行った。提言は、同県の経済活性化策における敦賀地域の位置付けを明確なものとするとともに、県全体の産業活性化の原動力として一翼を担うべく、直ちに実現が必要な施策に加え、地域の特性を踏まえた経済活性化の方向性を示している。今号ではその中から、原子力関連のものを中心に紹介する。
提言の趣旨
「福井元気宣言」を掲げ、「元気な産業」、「元気な社会」、「元気な県土」、「元気な県政」からなる4つのビジョンの着実な実現を謳った西川新知事が就任した。このうち、とりわけ「元気な産業」や「元気な県土」については、長引く景気低迷の折、敦賀地域経済界からの期待も大きい。
一方、敦賀地域にあっては、これまでのところ、福井県内の他地域に比べると相対的に景気動向が良好であったがゆえに、県の重点的な産業振興支援の枠組みとの間に間隙があったとの声があることに鑑み、今後は、福井県経済発展の基軸を担う重要な地域として、県の経済活性化策において明確に位置づけられ、福井県政と協働して産業活性化に取り組んでいくことが望まれる。
西川県政の発足と機動的な新政策展開の本格化に期を同じくして、県の経済活性化策における敦賀地域の位置づけを明確なものとし県全体の産業活性化の原動力として一翼を担うべく、敦賀地域の特性を踏まえた経済活性化の方向性とともに、直ちに実現可能な諸施策を提言していくことは意義深い。
敦賀商工会議所では、地域中小企業の経営支援はもとより、地域全体の産業振興に努めているが、今般、こうした動勢を踏まえ、より一層強力に敦賀地域の振興を推し進めるため、平成15年7月、各界・各層の識者で構成する「敦賀地域経済振興懇談会」を設置し、3か月にわたる議論を経て、敦賀経済の浮揚・雇用創出・新産業の創出等を図るビジョンをとりまとめ、実効ある政策提言を通じて、地域総合経済団体としてのリーダーシップ発揮を企図したところである。
T.直ちに実現が必要な施策
1.日本原電3・4号機増設準備工事早期着手と「もんじゅ」改造工事の推進
日本原電3・4号機増設計画は、平成14年12月25日、福井県知事と敦賀市長により安全協定に基づく事前了解を得た。
これを受けて、早急に原子炉設置変更許可を得、準備工事に着手すべきである。
一方、高速増殖原型炉「もんじゅ」は、平成14年12月に改造工事に関する国の安全審査が終了した。その直後、国の原子炉設置許可(昭和58年)を無効とする判決が名古屋高等裁判所金沢支部によりなされた。国はこれを不服として直ちに上訴し、現在、最高裁判所において審理が行われている状況である。
我が国にとって高速増殖炉を中心とした核燃料サイクルの研究開発は必要であり、「もんじゅ」はその研究開発の中核施設となっている。安全確保を大前提とし研究開発を進めていくことが重要である。
「もんじゅ」改造工事については、運転と切り離して対応すベきであり、県のもんじゅ委員会の最終報告書、国の考え方や取組状況等の議論から改造工事の推進を図るべきである。
もんじゅは地場産業である原子力の活性化のために必要不可欠であると認識する。
2.3.4.
(略)
U.敦賀地域の特性を踏まえた経済活性化の方向性
1.敦賀地域の「強み」と「弱み」
敦賀経済の浮揚・雇用創出・新産業の創出等を図るビジョンをとりまとめ、実効ある政策提言を行うべく、まず、敦賀地域固有の「強み」と「弱み」の導出を試みた。
(略)
(1)敦賀地域の「強み」
(原子力)
(略)
原子力開発利用に関する恵まれた環境を活かして、地域のエネルギー関連産業クラスターを構築し、成長の原動力である技術・人材・関連支援産業の集積を進めていくことを狙ったネクストビジネス・アクセラレーターの設置など、産学連携の定着・強化が進められつつある。
なお、原子力防災の面では、敦賀地域においても、原子力保安検査官事務所が設置されている。
(略)
(2)敦賀地域の「弱み」
(原子力)
(略)放射線に関わる医療機関の不足、原子力分野の人材を輩出し得る教育機関の不在、産学連携の主体ともなり得る工学系大学の不足、経済波及や技術交流・移転を担う地域産業集積の不足などがある。
(略)
(3)敦賀地域の「機会」
(原子力)
(略)
まず、「原子力発電施設等の振興に関する特別措置法」(いわゆる特措法)に基づく支援措置の適用、平成15年10月の電源三法交付金制度運用の弾力化、平成16年度の電源立地振興モデル事業の実施、などが考えられる。そのほか、二酸化炭素排出量削減を意図とした地球温暖化対策大綱の推進による原子力発電所立地促進がある。
また、福井大学大学院工学科原子力・エネルギー安全工学専攻の誘致、(財)若狭湾エネルギー研究センターにおけるガン治療のための粒子線研究の進展、それに関連した「がんケアセンター」(仮称)の建設などがある。
(略)今後、福井県下に立地する原子力発電所についても廃炉措置に移行することが想定され、敦賀地域は、原子力発電所解体事業の集積地(基地)となり得る可能性を持つ。
(みなと)
(略)
まず、「原子力発電施設等の振興に関する特別措置法」(いわゆる特措法)に基づく支援措置の適用、平成15年10月の電源三法交付金制度運用の弾力化、平成16年度の電源立地振興モデル事業の実施、などによる基盤整備などが考えられる。
(略)
(4)敦賀地域の「脅威」
(略)
2.敦賀地域における経済活性化の方向性
(1)地場産業「原子力」の発展
敦賀をはじめとする嶺南地域は我が国の商業用原子力発電所が集中する地域であり、原子力は福井県嶺南地域の大切な地場産業である。
地場産業の原子力が発展することが、敦賀地域経済活性化のために必要不可欠である。(略)「原子力」を取り巻く強み、弱み、機会と脅威を分析し、地域特性を踏まえた施策を検討した。
地場産業「原子力」の発展のため、以下のプロジェクトの早期実現を提言する。
@原子力人材育成強化
A原子炉廃炉措置研究への対応
B防災体制の強化と地域内原子力教育の推進による理解促進
@施策体系
@.原子力発電所とのさらなる共存共栄の強化
(略)
A.原子力関連産学連携の強化による新たな受注機会の創出
(略)
B.将来を見据えた廃炉措置への積極的な対応
(略)
C.原子力人材育成強化による地域産業への派生・強化
(略)
D.地域内原子力教育の推進による理解の促進
(略)
E.防災体制の強化による安心感の醸成と産業機会創出への展開
(略)
F.広域・地域連携強化による情報発信力の強化
(略)
A来年度に実施すべきプロジェクト
@.原子力人材の育成強化
平成15年10月に福井医科大学との統合を果たした福井大学は、大学院工学科に「原子力・エネルギー安全工学専攻」を設置する予定である。また、福井医科大学では生体画像医学の統合研究プロブラムがCOEに選ばれており、敦賀地域の新しい技術シーズとなる可能性が高まってきている。敦賀経済界としても(略)その人材を活用した新たな研究開発の展開に期待するものである。
(略)
敦賀地域には原子力分野における我が国トップレベルの研究機関である核燃料サイクル開発機構敦賀本部があるが、新型転換炉ふげん発電所の廃炉は原子力産業における大きな研究テーマとなっている。
今後、こうしたビジネスチャンスの学術的なサポートを福井大学に期待するために、敦賀商工会議所としては、経済界のニーズを的確に伝えるとともに、有用な人材の受け入れ先として機能することを検討していくことも重要であると認識している。
A.原子炉廃止措置研究への対応
(略)敦賀地域においては、新型転換炉ふげん発電所の原型炉としての運転が平成15年3月末で終了し、(略)また、全国の原子力発電の25%を供給している福井県では、(略)既存の原子力発電所についても、今後、廃止措置は重要な研究テーマとなる。
これに対して行政が関与し、敦賀商工会議所が中心となって、地元企業の原子炉廃止措置研究への参画を含めた産学連携体制を組み立てていくことが重要である。
この事業推進に当たっては、日本原子力発電梶A関西電力梶A核燃料サイクル開発機構、電力中央研究所等と連携した研究・推進組織「ふげん廃炉委員会」(仮称)を組織することが重要である。また、研究に当たっては、補助金などの助成措置のもと、研究開発が円滑に推進されることが望ましい。
B.防災体制の強化と地域内原子力教育の推進による理解促進
(略)原子力に対する防災体制強化の動きに合わせ、、地域住民を対象とした原子力教育・広報活動の活発化が予想される。地場産業である原子力に対する地域住民の理解を促進し、原子力産業の活性化を図っていくことが重要である。
経済界としても、教育委員会に対する人材派遣などにより、教育現場における原子力教育の推進と理解促進を図っていくことに貢献する。また、今後活発化する原子力教育・広報事業については、地元事情に精通した地元企業で担っていくことが望ましい。
(2)(略)
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