[原子力産業新聞] 2003年12月4日 第2213号 <3面>

[米社、CERN] がん研究で反陽子照射が初成果

【ニューポートビーチ(米カリフォルニア州)PRN=共同JBN】米Pバー・ラボのウェルチ社長は11月25日、科学者の国際協力によって、がん研究に使われる細胞処理で、反陽子照射の生物学的効果を明らかにすることを目指した初の反陽子ビーム実験が完了したと発表した。

 Pバー・ラボは、この測定を行うためスイス(ジュネーブ)にある欧州原子核研究機構(CERN)との協力体制を組んだ。今夏行われた実験で得られた画期的なデータは、生きた細胞に反陽子を照射した初めての測定結果である。

 CERNのロツフ・ランデュア博士は「細胞に与える反陽子の生物学的効果の研究は、将来有望であろう治療利用として大きな関心がある。」と語った。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)メディカルセンターの放射線腫瘍学部長でPバー協力のシニアメンバーであるロドニー・ウィザース博士は、「今日までの測定結果は、反陽子は照射経路の末端の狭い地点の線量ピークで、ビームが入った表面より約10倍の効果的な線量をもたらすことが分かっている」と語った。

 Pバー・ラボ最高技術責任者のジョー・マーティン博士は「反陽子は、ある種の腫瘍の治療のため、新しい非侵襲性の外科ツールを開発する基礎になる。反陽子の効果的線量は、周辺の細胞ではなく圧倒的に腫瘍部位に集中してもたらされるためで、これは通常の対抗分野のX線がビームの入口、腫瘍、出口に対してほぼ同量の放射線量を与えるのと違うところだ」と語った。


Copyright (C) 2003 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.