[原子力産業新聞] 2003年12月11日 第2214号 <1面>

[シリーズ] ニッポンの町工場街を歩くB 岩井製作所(大田区)(1)

 (有)岩井製作所(東京都大田区南蒲田、岩井仁社長=写真)は、精密旋削加工を得意とする。1974年の創業以来、様々な製品の旋削加工を手がけてきたが、BWRの制御棒駆動機構に使用する制御用シリンダーや新幹線の揺れ制御用シリンダーなどで、その技術力の高さを示してきた。

 大田区の中小工場は約6000社。(財)大田区産業振興協会は、その中から「人に優しい、まちに優しい、技術・技能に優れた工場」を毎年、「優工場」に認定している。岩井製作所は99年度の「優工場」である。以前は数人の従業員と仕事をしていたが、それぞれ暖簾分けして独立。現在もお互いに協力するが、岩井製作所としては岩井社長1人ですべて熟す。20数平方メートルの小さな工場だが、ここから原子炉や新幹線に使用される精密旋削製品を送り出してきた。

 岩井製作所が手がける制御用シリンダーは制御棒の位置を水圧で制御するための駆動源の役割を果たす。「日本も原子炉を国産化することになり、大田区の数社に制御用シリンダーを製作して欲しいという話が来た。結局、うちともう1社の2社が製品認定され、それぞれ半数を供給することになった」(岩井社長)という。シリンダーは内径195ミリメートル、長さ1メートルの大きさ、重量約80キログラム。国産化当初の50万キロワット級原子炉1基で、100本前後のシリンダーが使用される。始めはSUS304だったが、その後、より性能に優れるステンレス材が使われている。

 原子炉の制御用シリンダーに最も強く求められるのは製品の精度。内径精度は100分の2ミリメートル。精度にばらつきがあると、原子炉の制御棒の作動がばらつくことになり、原子炉の信頼性にも影響する。

 この制御用シリンダーの旋削加工には、熟練した旋削技術を必要とした。「鋼材メーカーがステンレスパイプを成型する際に発生する応力が、製品となった後もパイプに残っており、旋削している時にその応力による歪みが発生し、精度がばらつく。特に原子炉の制御シリンダーは直径が大きく、応力の影響を受け易い」という。このため、「旋削の際にはパイプの冷却に気を配り、可能な限り応力の影響が受けないようにするが、気を使う作業になる」。

(次号に続く。高橋毅記者)


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