[原子力産業新聞] 2004年1月6日 第2216号 <1面>

[原子力委員会] 原子力白書を公表 信頼回復に向け 「国民との意見交換」強調

 原子力委員会はこのほど2003年度版の原子力白書を作成、12月19日の閣議に報告し、公表した。テーマを「新たな時代の原子力政策」とし、原子力行政に対する不信を払拭するため、国民と双方向の意見交換を行いながら進める新しい政策策定プロセスが必要としている。原子力白書は、1957年以降ほぼ毎年発行されてきたが、今回は5年半ぶり。事故、不祥事などの対応に追われ発行が延び延びになっていた。

 2003年版は、第1章「新たな時代の原子力政策」、第2章「国内外の原子力開発利用の状況」および資料編で構成。第1章は、@我が国のエネルギーと原子力発電A国民の信頼回復を目指してB核燃料サイクルC革新的な原子力技術の確立を目指した研究開発D原子力を巡る国際情勢E原子力政策の評価Fこれからの原子力政策と原子力委員会−−などからなる。

 国民の信頼回復では、JCOの事故、東京電力の検査・点検の不正などに対応し、法律の改正などにより、安全規制体制を強化した点を強調。相互理解を通じた政策合意では「原子力政策に対する信頼を回復するためには、引き続き適切な政策の提示と説明責任を果たすことにより、国民の幅広い支持を得ていくことが重要である。その際、どのような課題を解決するために国はどのような政策を実施するのか、この課題に対する国民の考えはどうなのかといった点について、客観的なデータに基づいた双方向のコミュニケーションを通じて政策合意を図っていくことが重要」とした。

 核燃料サイクルの現状では、「プルサーマル計画やもんじゅの改造工事は、立地地域をはじめとする国民の十分な理解を得た上で進める必要があり、現状において計画通りには進んでいない」とした。また、「名古屋高裁金沢支部による国側敗訴の判決などを契機に、核燃料サイクルに対する疑問が様々な立場から提示されている」とともに、「我が国の脆弱なエネルギー供給構造を改善するために高速増殖炉サイクルの確立が究極的な目標」としている。

 原子力研究開発の動向では、ITER計画や革新的原子力システムなど国際的な枠組みによる研究開発活動が広がっており、我が国もこうした活動の連携が重要と指摘。また、原子力を取り巻く状況は長期計画を策定した2000年11月の時点とは大きく変化しており、新たな長期計画策定の検討を行うとしている。(白書の概要を8日号、15日号で詳報の予定)


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