[原子力産業新聞] 2004年1月6日 第2216号 <11面> |
[東京電力] 東電リサイクル燃料備蓄センター 建設計画2000年6月の原子炉等規制法一部改正を受け、同年11月に青森県むつ市が東京電力に対し、「リサイクル燃料備蓄センター」立地に係わる技術調査依頼を行ってから、丸3年以上が経過した。その間東電では、むつ市内に「むつ調査所」を開設し、現地調査や立地可能性調査を行った後、2003年4月には事業構想の公表等を実施。一方むつ市側も、市議会などにおける審議および、設置された専門家会議などにより様々な角度から検討を行った結果、03年6月には市長による誘致が表明され、同年7月には立地要請を行うなど、2010年の操業開始にむけ、計画は順調に進んでいる。今号では、わが国原子力発電の将来を握ると言っても過言ではない「リサイクル燃料備蓄センター」建設計画の進展状況を紹介する。 計画の概要 事業主体 東京電力を中心に他の電力会社の参画を得て、リサイクル燃料を貯蔵・管理する新会社を設立する。その会社が国から貯蔵事業の許可を受けて施設の建設および運営を実施。 施設の規模 当初は3000トン規模の貯蔵建屋1棟を建設し、その後2棟目を建設する。最終的な貯蔵量は5000〜6000トン規模で、うち約4000トンは東電が、1000〜2000トンは参画会社が使用する。 立地可能性調査の概要 「リサイクル燃料備蓄センター」の立地可能性調査は、関根浜港周辺地域(以下 当該地域と記す)を対象に、2001年4月〜03年3月までの約2年間、「気象」「地盤」「水理」「地震」「社会環境(文献調査のみ)」「その他(動植物、景観など)」の6項目について実施された。 結果 (1)気象に関する調査 ○ むつ市周辺の気象および最寄りの気象観測所などのデータについて、文献調査を実施。また、水川目地内で気温、湿度、降水量、積雪を観測。 ◎極端な低温・高温、乾燥・多湿、豪雨雪などはみられないことから、施設を立地するうえで問題はない。 (2)地盤に関する調査 ○ 文献によれば、関根浜港を中心とする半径3kmの範囲には、施設の立地に支障となる活断層はみられず、また、恐山とむつ燧岳の火山活動については、いずれも主活動時期を過ぎており、およそ10万年前以降、大きな規模の活動はないとされている。 ○ 陸域において実施した「地表地質調査」の結果、近くに分布するリニアメントなどはいずれも活断層ではない。 ○ 海域において実施した「海上音波探査」の結果、いずれの断面においても、各地層内に断層を示唆するような変位や変形がないことを確認した。 ○ 「ボーリング調査」の結果、各地層は連続し水平に堆積しており、大きな変位や変形がない地層であることを確認した。 ○ 上記調査の結果、当該地域およびその周辺には、施設の立地に支障となる活断層はないものと判断した。 ○ 現地にて地盤の硬さなどを把握するための試験を実施し、施設の支持層となり得る地層を深さ40〜50m以深で確認した。 ◎ これらの文献調査および現地調査の結果から、施設を立地するうえで問題はない。 (3)水理に関する調査 ○ 文献によれば、当該地域の河川は、洪水時において周辺に大きな影響を及ぼすものではないとされている。 ○ 文献および当該地域の地形状況からみて、津波は大きな影響を及ぼすものではない。 ○ 当該地域の河川および表流水の状況についての確認調査を実施。また、掘削したボーリング孔を利用して、地下水位を観測した。 ◎ 河川の洪水、津波による影響などの状況からみて、施設を立地するうえで問題はない。 (4)地震に関する調査 ○ 文献によれば、過去に、当該地域で震度6以上の揺れをもたらした地震はみられない。 ○ 「地震観測」の結果、地表付近で大きく揺れが増幅されるような傾向はみられない。 ○ 「弾性波探査」の結果、地下500m程度まで、各地層が広い範囲にわたってほぼ水平に広がっており、ボーリング調査結果と整合することを確認した。 ◎ 過去および現在の地震時の揺れの傾向などからみて、施設を立地するうえで問題はない。 (5)社会環境に関する調査(文献調査) ○ 文献によれば、施設の立地に大きな影響を及ぼす工場などはみられない。また交通の状況についても、施設の立地に大きな影響を及ぼすものではないことを確認した。 ◎ 周辺施設や交通の状況などからみて、施設を立地するうえで問題はない。 (6)その他の調査 ○ 「動植物調査」は、四季の調査を実施し、草地などの平坦な土地に生息・生育する種を多く確認した。なお、希少な鳥類や昆虫類などの飛翔などもみられた。 ○ 「景観調査」は、四季の調査を実施した。当該地域は、季節感豊かな牧草地であり、西側遠方には釜臥山を含む恐山山地を望むことができる。 ○ 当該地域における文化財として、むつ市教育委員会によれば、美付地区において「関根納屋遺跡」があるとされている。 ◎ 今後、環境保全に充分に配慮していくことにより、施設を立地するうえで問題はない。 総合評価 立地可能性調査により得られたデータにもとづき評価をおこなった結果、施設の立地に支障となる活断層や火山がみられないこと、施設の支持層となり得る地層が存在することなど、実施した6項目すべての調査において、施設の立地に支障となる技術的データがないことを確認した。 したがって、むつ市関根浜港周辺地域において「リサイクル燃料備蓄センター」を建設することは、技術的に可能であると判断する。 主要な設備・機器 ○リサイクル燃料を搬入・貯蔵・搬出するための設備 金属キャスク、貯蔵建屋、金属キャスク取扱設備、その他付帯設備(放射線監視設備など) ○港湾施設 日本原子力研究所・関根浜港を使用する予定 ○輸送道路 ○事務・管理棟 リサイクル燃料の搬入・貯蔵・搬出 年間約200〜300トンを4回程度に分けて搬入の予定。 貯蔵後は、再処理工場へ搬出する。 貯蔵期間 順次建設される施設毎それぞれの使用期間は50年とする。(キャスク毎においても最長で50年の貯蔵とする) また、操業開始後40年目までに、貯蔵したリサイクル燃料の搬出について協議する方針。なお搬出後空いたスペースに、新たなリサイクル燃料を再搬入することはない。 操業開始 2010年までに操業を開始したい方針だが、地域の理解を得ながら、できるだけ早期の操業開始を目指す。 今後のスケジュール 03年7月23日、むつ市からの立地要請を受け東電では今後、青森県およびむつ市に対して立地協力要請を行うと同時に、国への事業許可申請に備えた詳細調査・施設設計に着手する予定。 |