[原子力産業新聞] 2004年1月6日 第2216号 <4面>

[年頭所感] 「世界最強の産業群を創出」 経済産業大臣 中川昭一

 平成16年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 昨年9月に経済産業大臣を拝命してまだ3ケ月ですが、就任直後の十勝沖地震への対応に始まり、連日明け方まで及んだメキシコとのFTA交渉、実体経済を担当する閣僚としての経済財政諮問会議への参画や米国の鉄鋼セーフガードの撤廃など、さまざまな課題に全力で取り組んでまいりました。新年を迎え、改めて決意を新たにしているところです。

 日本経済は、設備投資の前向きな動きなど明るい兆しが見られますが、中小企業や地域経済ではまだまだ厳しい状況にあります。

 若年者の雇用状況は極めて厳しい状況です。若者が未来にむかって夢を持ち、実現できるよう、職業訓練や就業支援、創業・新事業への挑戦を支援します。

 地域経済の活性化のためには、世界に通用する新事業が地域において次々と生まれていくように産業クラスター計画をさらに進めてまいります。

 技術革新は産業競争力を強化する重要な鍵です。環境、IT、ナノテクやバイオなど可能性の大きい重要分野を中心に研究開発を強化します。研究開発型ベンチャーを支援し、産学官連携を推進することにより、イノベーションあふれる経済社会を構築してまいります。

 知的財産は富を生み出す源です。知的財産の「創造」「保護」「活用」がさらに新しい知的財産を生み出す「知的財産立国」の実現に全力を注ぎます。任期付特許審査官の大幅増員などにより審査順番待ち期間をゼロにし、世界最高レベルの迅速な審査を実現します。中国などにおける模倣品対策も強化します。

 IT分野では、昨年8月に政府がとりまとめた「e−Japan戦略U」に基づき先進的なITの利活用を進めていきます。電子タグ、情報家電の普及、ITセキュリティ対策や電子政府の構築に取り組みます。

 グローバル化した経済では、日本が強みをもつ製品・産業の魅力を最大限活用することが不可欠です。日本の魅力、すなわち「日本ブランド」を強化するための市場の整備や国際的企業の収益性を向上させる戦略的な対外経済政策を進めてまいります。

 外国との経済連携はその鍵となるものです。国益の最大化を目指すことを基本原則にし、メキシコとの協定の早期締結に全力を尽くすとともに、韓国、アセアンとの協議を積極的に進め、将来的には東アジア全体の経済連携の実現を目指します。

 WTO新ラウンドについては、新時代にふさわしい通商ルールを創設すべく、合意形成に向けて全力を尽くしてまいります。

 また、外国の活力を日本の活力源にしていく発想も重要です。政府は5年で対日投資を倍増させる計画を進めています。外国企業にとって日本が魅力ある場所となるように事業環境を整備し、日本各地における外国企業誘致活動を支援するとともに、海外への日本の魅力を積極的にPRしてまいります。

 北朝鮮問題や大量破壊兵器、テロに対しては、日本の国益のため、また世界の一員として毅然として取り組む必要があります。貿易管理においては、懸念国が第3国を迂回して巧妙に大量破壊兵器等を調達している実態を踏まえ、関係国・地域と連携して輸出管理体制を強化します。大量破壊兵器の拡散防止のために、今春にも「キャッチオール規制」の懸念品目リストを拡充します。

 エネルギー・環境政策をとりまく環境は大きく変化しています。激変する中東情勢、昨夏の関東圏における電力需給逼迫問題や米国の大規模停電をきっかけとした供給信頼性への関心の高まり、地球温暖化問題などに柔軟に対応していくため、中長期的なエネルギーシステムはどうあるべきか、そのためにどのような政策が必要か、について検討を進めてまいります。

 原子力については安全確保が大前提です。一昨年の原子力発電所における一連の不正事案は国民に大きな不安を与えました。国際的な水準の安全規制を実現することも課題です。昨年10月に規制制度を強化しましたが、新たな規制を確実に執行し、安全確保に万全を期すとともに、地域への積極的な説明を行い、安心の醸成に最大限努力します。

 「自然の叡智」をテーマに2005年3月に開催予定の愛知万博(愛・地球博)には、既に海外から100を超える出展が予定されています。ロボットやIT等の最先端技術を展示し、来場者に感動を与え、子供達に夢と希望を持っていただけるような博覧会となるよう最大限支援します。

 これらの課題への取り組みは、日本の将来にとってどれも欠かせないものばかりです。少子化・高齢化、地球環境問題、産業空洞化、国際競争力の低下や低迷する地域経済など、日本は多くの課題に直面しています。貿易立国である日本にとっては、これらの課題を乗り越え、常に世界最強の産業群を維持、創出し、それを支える強靭で広大な裾野産業を育てていくことが不可欠です。また、日本には人材という素晴らしい資源があり、その能力を最大限発揮できる社会を実現させなければなりません。私は、今年5月をめどにそのための包括的な戦略として「新産業創造戦略」を策定したいと考えています。

 私は、経済全般、通商を担当する閣僚として、将来を見据える視点と今まで以上のスピード感をもって政策運営に努めていくことが必要であると考えています。幅広い経済産業行政を遂行するためには、国民の皆様との問題意識の共有が何よりも大事です。積極的に国民の皆様に語りかけ、説明責任を果たしながら、全力で取り組んでまいります。皆様の御理解と御支援をお願いいたします。

 最後に、本年1年の皆様の御多幸と御健康を祈念いたしまして、新年のごあいさつといたします。


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