[原子力産業新聞] 2004年1月6日 第2216号 <4面>

[年頭所感] 「科学技術創造立国」目指し 内閣府特命担当大臣(科学技術政策) 茂木敏充

 新年おめでとうございます。

 科学技術は、我が国が、知の創造と活用によって世界に貢献し、また、国際競争力のある持続的発展を図り、さらには、安心・安全で質の高い生活を実現するために不可欠なものであり、私は、世界最高水準の「科学技術創造立国」を目指し、そのための日本の科学技術をより一層高い水準へと引き上げる構造改革に取り組んでおります。

 科学技術の中でも、原子力は環境保全と経済発展を両立させるエネルギー源として不可欠であると共に、放射線の利用による医療の進歩や農業など産業の発展にも資する重要な役割を担っています。

 昨年10月に「エネルギー基本計画」を閣議決定しましたが、石油、石炭などの国内エネルギー資源に恵まれない我が国では、地球環境を保全しつつ、エネルギーを安定的に供給するためには、原子力発電を推進することが不可欠であり、「エネルギー基本計画」においても、原子力発電を基幹電源として位置づけ、原子力を効率よく利用する核燃料サイクルの確立に努めていくこととしております。

 原子力を巡る最近の状況については、原子力発電所における点検をめぐる不正等により、原子力安全に対する国民の信頼が著しく損なわれ、一時は東京電力の原子炉17基すべてが運転を停止せざるを得ない状況となりました。昨年は冷夏でもあり停電の事態には至りませんでしたが、停止した原子力発電を火力発電により代替したことにより、2酸化炭素の排出量の増加は1年間で約4200万トンとなりました。これは京都議定書における基準年(1990年)の温室効果ガス年間排出量の約3.4%にものぼるものであり、改めて原子力発電の必要性が認識されました。

 原子力政策を着実に推進していくためには、安全確保を大前提に、原子力を推進する国、事業者と立地地域の住民をはじめとする国民が、相互理解を深めていくことが必要となってきています。原子力委員会においても、広く市民の方々からご意見をうかがう「広聴」を行うため、国内各地で「市民参加懇談会」を開催するとともに、核燃料サイクルについて国民から提示されている様々な疑問に対して真摯に答えるものとして報告書「核燃料サイクルについて」を取りまとめ、立地地域に出向き直接の意見交換を進めています。

 また、エネルギー安全保障と環境負荷低減の観点から使用済燃料を再処理して回収されるプルトニウム、ウランを有効利用していく核燃料サイクル政策を引き続き進めていくこととしています。この中で、軽水炉でプルトニウムを燃焼させるプルサーマル計画と六ヶ所再処理工場の運転は、当面のプルトニウム利用方策として、今後積極的に進めていくことが重要です。また、ウラン資源の利用率を飛躍的に高める高速増殖炉サイクル技術の確立のため、安全確保を大前提として高速増殖炉「もんじゅ」の早期の運転再開を期待しています。

 「地上に小さな太陽を作る」というITER計画は、将来のエネルギー問題の解決につながるものであり、国際協力の下、積極的に進めていくことが重要であります。我が国への誘致実現に向けて国全体としての強力な取り組みが必要であり、私も引き続き関係者と協力しつつ全力で取り組んでまいります。

 また、原子力分野での国際協力では、アジアとの関係を重視しています。このため、アジア原子力フォーラムの開催を通じ、アジア諸国における放射線利用や原子力エネルギーの開発利用を円滑に進めていくべく、意見交換や技術開発協力を進めてきております。

 年頭にあたり、皆様の変わらぬ御理解と御協力をお願いいたしますとともに、日本の原子力の発展を担う皆様の一層のご活躍を期待し、一層の御多幸をお祈りいたしまして新年のご挨拶といたします。


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