[原子力産業新聞] 2004年1月15日 第2218号 <2面>

[書評] 「核燃料サイクル」藤家洋一、石井保 著

 原子力エネルギーが、文明社会を気候変動・資源枯渇の危機から救い、持続的発展の軌道に乗せる切り札となり得るのか。あるいは子孫に負の遺産を残すだけの、間に合わせのエネルギー手段に終わるのか。

 理学、工学それぞれの立場で原子力開発に深く関わってきた学・官界、民間企業を代表する二人の著者が、5年を超える議論の末まとめ上げた本書は、核燃料サイクルに対する姿勢こそが、その岐路を決定する重要な鍵であることを、広範な資料を基に高い視点から論証している。

 「後始末をきちんとすることが、新たな資源を生み出すことにつながる」。核燃料サイクルの特徴を、その社会的意義と技術の両面から、これほど克明にしかも平明に解き明かした著作はなかろう。

 ともすればポピュリズムに堕し、目先の利害にこだわりがちな議論の横行する昨今、専門、非専門を問わず、エネルギー問題に関心を持つ人々に、広く本書を推奨したい。(秋元勇巳・三菱マテリアル相談役)

 ERC出版、219頁、1500円。


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