[原子力産業新聞] 2004年1月29日 第2220号 <1面>

[原研] 原研新理事長 岡崎俊雄氏に聞く

 今月1日付けで、日本原子力研究所の新理事長に岡崎俊雄氏(=写真)が就任した。ITER、J−PARC、HTTR、原子力2法人統合などへの取組みについて岡崎新理事長に聞いた。

 ―新理事長としての抱負から

 2つの点で厳しい認識を持っている。1点は我が国の原子力を取り巻く環境、もう1点は原研自身の問題になる。原子力に対する信頼感が揺らいでおり、関係者の信頼回復向けた努力が強く求められている。原研はここ数年の間で、予算が約300億円削減され、人員も同じく約300人削減された。そうした点は厳しいが、J−PARC、HTTR、ITER計画を支える成果など原研の中から新しい発展の芽が生まれてきており、こうした芽を大きく育てることに傾注したい。

 ―ITERについて

 文部科学大臣の3か国訪問(韓国・ロシア・中国)は私も同行させて頂いた。日本の姿勢や熱意の理解を得る上で意味の大きい訪問だった。ロシアからは独自の提案があり、中国では疑問に答え、誤解も明らかになった。来月、新しいミッションを派遣し、技術的な疑問に対して回答する。

 ITERは効果的で効率的な研究開発との点から日本サイトが最も適している。工学設計などで日本が主導的な役割を果たしてきたことは世界も認めており、日本はそれだけの人材を有している。原研もJT−60の成果を基に、ITERの低コスト化をはじめ大きな貢献を果たしてきた。

 良いかたちの国際協調により、出来るだけ円満に決着することを望んでいるが、フランスのITERに対する思い入れも強く、日本に対するネガティブキャンペーンなど、思い入れが多少行き過ぎているのでは、と思う。

 ―J−PARCの状況は

 2007年度の完成に向けて、工事は順調に進んでおり、東海研究所の様子が変わりつつある。J−PARCにより東海研究所は世界の科学をリードする刺激的な存在になる。

 ―HTTRの関心も高い

 HTTRは装置としては完成し、現在、安全実証試験を行っている。今年度中に950度Cの最終目標を達成する予定だが、HTTRとISプロセスを組み合わせた水素製造技術に対する期待がここにきて急速に高まっている。ISプロセスは当初6.5時間の連続運転だったが、昨年末には20時間の連続運転に成功した。現在は工学規模のレベルだが、次のパイロットプラントに向けた研究開発の加速などのため、2004年度は予算の増額を要求し、認めて頂いた。

 国内より米国、欧州など海外からカーボンフリーで安定供給できる製造技術として注目され、最近、大洗研究所に海外からの訪問者が非常に増えている。米国のGW開発計画では水素製造のテーマが半数を占め、中心的な存在だ。先日、DOEの首脳も大洗研究所を訪れ、協力を要請された。米国、フランスなどとの協力関係が発展すると思う。また、日本の産業界の協力もお願いしたい。(2面に続く)


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