[原子力産業新聞] 2004年2月12日 第2222号 <2面> |
[理化学研究所] イオンビームで髄液漏れ防止理化学研究所は1月30日、東京女子医科大学および化学及血清療法研究所と共同で、イオンビーム照射により人工硬膜の術後髄液漏れを防ぐ技術を開発したと発表した。 ビーム照射により人工硬膜表面を改質し実現したもので、今後脳動脈瘤の治療材料としての応用も進める計画。 人工硬膜には一般に延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が使用されるが、生理的接着剤であるフィブリン糊との接着性や周囲組織との生体適合性に乏しいため、脳外科手術後に髄液漏れが生じる危険性がある。 今回開発した技術はこうしたePTFEの課題の克服を目指すもの。アルゴンイオンなどを適切な条件でePTFEに照射すると、ePTFE原子の結合が切断された後、原子再配列によりカルボニル基などの新しい結合が生成し、親和性が向上。また、表面形状の多孔性が照射損傷で大きくなり、これに入り込んだフィブリン糊のアンカー効果が高まり接着性が増す。 東京女子医科大学脳神経外科では医学倫理委員会の承認を受けた後、経鼻的下垂体腫瘍摘出手術の際に髄液漏れを伴った症例に使用し、良好な効果を得た。
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