[原子力産業新聞] 2004年2月19日 第2223号 <1面> |
[原子力安全委員会]東京で安全シンポ開催原子力安全委員会は7日、東京都千代田区の東京国際フォーラムで、「わたしたちの安全と原子力」をテーマとして第10回原子力安全シンポジウムを開催した。原子力安全に関して市民との対話を進めることを目指して開催したもので、約150名が出席した。冒頭の松浦祥次郎委員長の開会挨拶に続き、黒川清・日本学術会議会長と鈴木篤之・原子力安全委員会委員が基調講演を行い、続いてパネル討論を行った。 黒川氏は「安全と安心」と題した講演で、20世紀は驚異的な科学技術の進歩、グローバリゼーション等が特徴だが、21世紀の課題は人口問題、環境問題等と概観。安全を考える場合、歴史的な背景、グローバルな国際関係、社会的関係等を考慮する必要があると問題提起を行った。 鈴木委員は「原子力と安全性―手続き的安全性の重要性」と題して、今後の原子力安全の方向性として、ハードパワーからソフトパワーへの転回が必要であるとし、施設や技術のみでなく、原子力利用に関与する人、組織、社会や制度を誇れるものとしていくことが重要との見解を述べた。 小林傳司・南山大学教授がコーディネーターを務めたパネル討論では、金子清俊・国立精神・神経研究センター神経研究所部長が、「食」の安全に関連して、安全と安心の確保に関する日米欧の考え方の相違についてコメント。科学的根拠は必ずしも万能ではないこと、科学にも限界があることを理解すべきと述べた。 会場の参加者からは、「喫煙は愚行とみられても、喫煙者は利益を享受している。リスクのみで判断できない」、「安全の判断は客観的には確率論に頼らざるを得ない」などの意見が寄せられた。
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