[原子力産業新聞] 2004年3月11日 第2226号 <3面>

[欧州経済社会委員会] 温暖化対策で原子力を評価

EUの諮問機関である欧州経済社会委員会(EESC)は2月25日、「原子力発電利用に関する問題」と題する報告書を発表、全世界の原子力発電所が、年間、3億〜5億トン相当の二酸化炭素の発生を防ぎ、京都議定書での削減目標に「非常に有効な貢献をしている」と評価。EU域内において「原子力発電は、多様化・均衡化した、経済的で持続可能なエネルギーの一要素」として、「原子力発電の部分的または全面的な廃止は、地球温暖化に対するEUの公約達成を著しく困難にする」と結論づけている。

この報告書は、原子力発電論争での論点を明らかにし、EU議会で審議が滞っている「原子力包括法案」の参考となるよう、EESCがまとめたもの。特に、二酸化炭素を出さない電源としての原子力発電に焦点をあてている。

報告書は、EU域内において、原子力発電が35%という大きなシェアを占め、EUのエネルギー・セキュリティやエネルギー輸入削減に大きな貢献をしていると評価。また、発電コストが安定していることから、EU内の電力料金の安定性に寄与していると述べている。

現在運転中の原子力発電所が寿命により運転を終了した場合、「再生可能エネルギーはその代替にはなり得ない」と指摘。その理由として、風力発電の平均発電時間が年間2000〜2500時間であるなど、「稼働率が低く、予測不可能」なことを挙げている。

一方、原子力発電については、安全性、放射線防護、廃棄物と使用済み燃料の管理が主な問題だと指摘。安全性と放射線防護は長年、規制機関が対応してきており、廃棄物管理についても、フィンランド、スウェーデンが高レベル処分サイトを決定、仏とスペインが低レベル処分場を決めるなど、EU内でも前進が見られるとし、EU委員会もこれを迅速化するよう求めていると述べた。

一方、原子力発電の経済性については、OECD域内では、「全体的に競争力がある」としながらも、仏AREVAが欧州加圧水型炉(EPR)で約25%の資本費削減を進めていることを紹介。米国の主導する第4世代炉国際フォーラム(GIF)では、50%の削減を検討していると述べ、これによって、「経済的リスクを他のエネルギー源と同等にまで下げることができる」としている。


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