[原子力産業新聞] 2004年3月18日 第2227号 <2面>

[文科省] 来年4月施行を目指し、放射線障害防止法改定案で要綱

 放射線障害防止法の改正法が来年4月1日に施行される見通しである。国際基本安全基準(BSS)免除レベルの導入、放射線取扱主任者の能力向上、廃棄物埋設処分を可能にする規定の整備などが骨子。5日に閣議決定されたが、今通常国会(会期6月16日)の文部科学委員会で成立し、関係政省令や告示なども整備される。

 IAEAが、国際放射線防護委員会(ICRP)の90年勧告を踏まえ、BSSを刊行したのは96年。国際免除レベルは、通常時で実効線量年間10μSv、事故時で同1mSv、併せて線源の1年間の使用による集団線量が1人・Svを超えないものとし、この線量を基に核種毎の放射能、放射能濃度を示す。

 国際免除レベルを放射線障害防止法に導入するための枠組みは、放射線安全規制検討会が検討してきた。BSSは295核種について放射能、放射能濃度を定めているが、国内では295核種に含まれていない核種も使用されているため、英国放射線防護庁(NRPB)の765核種を採用する。

 改正点は、国際免除レベル導入に伴う規制の合理化とともに、安全性の一層の向上、廃棄物埋設処分規定の整備などに区分される。

 規制の合理化では、現在規制対象のものが免除されるケースがある一方、使用核種によっては煙感知器、ガスクロマトグラフなど新たに規制対象となるケースもある。このため、設計認証制度を創設し、新たに規制対象となる放射能の小さい機器では、登録機関が実施する機器製造者に対する設計認証(設計、使用方法、品質保証方法が安全であることの確認)を受けた場合、使用開始後の届出又は届出不要とする。また、放射線同位元素を直接取り扱わない販売業者や賃貸業者の場合、現行の許可制から届出制に変更される。

 安全性の一層の向上では、安全管理面の強化として、放射線の測定、帳簿、教育・訓練などを登録機関が定期的に確認するとともに、放射線取扱主任者の定期講習の受講を義務付ける。また、施設検査・定期検査の合理化として、密封線源を扱う施設の使用方法や構造を踏まえた機器の危険性により、検査の要不要を定めた。

 廃棄物埋設処分では、埋設施設の基準への適合について国が厳格に審査した後、施設検査に加え埋設処分の段階で廃棄体を登録機関が確認する規定を整備する。1957年に制定された現行の放射線障害防止法は、廃棄物の海洋投棄を前提にしていたため、埋設処分の規定はないが、すでに今年1月、原子力安全委員会が埋設処分の安全規制の基本的な考え方を決定。今回の改正により昨年度末でドラム缶22万本が保管されている廃棄物の処分が可能になる。

 なお、陽電子放射断層撮影(PET)検査で発生する廃棄物については、今年度中に省令の改正により、放射性廃棄物としての適用から除外される見通し。


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