[原子力産業新聞] 2004年3月18日 第2227号 <4面>

[原研高崎研] 高耐熱の生分解プラスチックを開発

 日本原子力研究所・高崎研究所は12日、住友電工ファインポリマーと共同で、デンプン由来のプラスチックであるポリ乳酸に、放射線照射によって橋かけ反応を起こさせる技術を開発し、これを用いた高耐熱・高収縮率で透明な生分解性熱収縮材(=写真)の開発に成功したと発表した。

 ポリ乳酸は、コーンやイモ等のデンプンを発酵させて得られる乳酸を重合して製造される植物由来プラスチックで、自然界で分解可能な資源循環型材料。しかし摂氏60度を超えると熱変形して強度が低下するため、用途は発泡体や一部のフィルムのみに限定されていた。

 原研では、ポリ乳酸の高分子鎖を相互に繋ぎ3次元の網目構造を持つようにすることが出来れば、耐熱性や強度が向上し、家庭用・工業用電気機器及び自動車分野における電線の結束、さらには金属表面の被覆に用いる熱収縮材など用途の拡大が可能となる。このため放射線による橋かけ構造の導入に関する研究を実施していたが、このほど数十kGyの比較的低い線量で、効果的に橋かけ反応を起こす技法を新たに開発。また住友電工ファインポリマーはこの新技術を応用し、押出し成形したチューブ状ポリ乳酸を橋かけして、高温に耐えるポリ乳酸熱収縮材の製造技術を開発した。

 原研によれば新たに開発されたポリ乳酸熱収縮材は、同じポリ乳酸を使用した従来品に比べて収縮性能で約2倍以上、ポリエチレン(PE)製熱収縮材に比べて、摂氏80度で3倍の強度を有する上に、透明性が高いという。また同熱収縮材は、被覆保護や熱収縮フィルムなどに応用可能な、生分解性で透明性に優れた耐熱性高倍率熱収縮材であり、現在住友電工ファインポリマーが、用途開拓と量産化を検討している。


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