[原子力産業新聞] 2004年4月8日 第2230号 <2面>

[レポート] 『核燃料施設の臨界事故−JCO臨界事故を省みて−』内藤 奎爾 著

臨界事故とは何か、核燃料施設の臨界事故はどの程度のエネルギー発生量と放射性物質の放出量を伴うものかをリスクの概念から発電用原子炉の反応度事故(チェルノブイリ事故)及び原子爆弾の場合と比較して示している。核燃料施設の臨界事故で、問題になるのは臨界で生じる中性子とγ線の直達放射線であるが、適度な遮蔽があれば、施設外で放射線被曝の影響を与えるものではないとしている。JCO事故は、均質のウラン溶液製品を得るために安全審査で認められていない大量のウラン溶液を沈殿槽に注入したことによるもので、単純な人為ミスではなく、安全上重要な規制に対する意図的、組織的な違反に基づく事故(犯罪行為)であると糾弾している。一方、事故後の臨界安全管理関係規則の改訂や追加規制を評価しつつも、事業者、従事者の内部規制、それに対する内部監査制度の充実、安全文化の組織を挙げての徹底が重要であると力説している。

臨界事故発生時の対応―防災の章で、反省点、教訓と新法に対する率直な提言も行っている。本書は、一般向けには少々難しく忍耐力を要する。核燃料施設等の従事者、防災関係者に一読を薦める。(日本原子力学会会長 齋藤伸三)(原子力安全研究協会、B5版197頁、4600円税別)


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